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超音波医学会専門医。腎尿管結石・前立腺癌・肥大症の診断が得意です。 膀胱炎・尿道炎・男子不妊症では、院長自身が顕微鏡検査(尿・精液)を行います。 皮膚科学会認定専門医ではありませんが男性皮膚科も標榜しています。

アボルブ講演会@横浜ベイシェラトン

男性ホルモン・テストステロンがジヒドロテストステロンに変身(パワーアップ)するのをブロックする薬です。



プロペシアと同じ系統のアボルブ。プロペシアはAGAの薬ですが、先月発売されたアボルブは前立腺肥大症の薬です。

男性ホルモン・テストステロンがジヒドロテストステロンに変身(パワーアップ)するのをブロックする薬です。

今まであった前立腺肥大症を縮小させる薬・プロスタールがテストステロン値も下げてしまうのに対し、アボルブはテストステロン値を下げませんから、性欲には影響しません。

前立腺肥大症は、前立腺が肥大して尿道を締め付けて、排尿障害を起こす病気です。

治療は前立腺を縮める薬を使うのが合理的です。でも、プロスタールの後にハルナールが発売されると、様相が変わりました。

ハルナールは前立腺の筋肉(射精するときに使う)をリラックスさせます。

プロスタールを飲んだ効果を患者さんが実感できるのは4ヵ月後ですが、ハルナールは2~3日で効果が分ります。

こうして前立腺肥大症治療薬 = 平滑筋リラックス剤の時代が来ました。

今、前立腺肥大症の薬物治療について専門的な解説をお願いできる先生は、ハルナールのような平滑筋リラックス剤のプロばかり。

というわけで、アボルブ発売記念講演会なのに、講演してくださった先生は前立腺癌の薬物治療のプロの先生でした。

前立腺癌にホルモン療法が効かなくなったら、抗癌剤を使うわけですが、どの段階で抗癌剤を使うのが効果的か、がまだ決着していない、

転移に伴う症状が出始める前に使ったほうが、生存率が長くなるという研究報告があるが、

前立腺癌と診断された最初の日から計算する(初診日から抗癌剤を使い始める日までを合計する)と、差がなくなる、

というような、統計には気をつけましょうという、大変勉強になるお話しでした。

プロペシアで行われた前立腺癌予防治験が、アボルブでも行われていて、プロペシアの時より好ましい結果が出つつある、とのお話がありました。

アボルブの一般名はデュタステリド。デュタステリドのデュは、アン・デュ・トゥア(123)のデュ。

テストステロンがジヒドロテストステロンになる二つのルートの両方をブロックします。プロペシアより少し優秀なわけです。

仮面ライダーの変身ベルトが何本もあるのですが、そのうち、フィナステリド(プロペシア)は1本しか破壊しませんが、デュタステリドは2本破壊するのです。

アボルブで前立腺癌が予防できる、とのエビデンスがすぐに出るわけではない(出ました。ここをクリック。2010年11月追記)ですが、

巨大な肥大症に伴うPSAの軽度上昇には、すぐには針生検をせずに、

アボルブを処方してみて、PSAが下降するか様子を見る、なんて選択肢もあるかもしれません。

早期がんの段階で針生検で確定診断をつけても、手術の適応とならず、ホルモン療法が選択される、75歳以上の方には、

患者さんに、このような提案をしてみてもよいのかも、と思いました。

1人の前立腺癌死を防ぐために、48人余計に治療をしなければならない、という統計が出されました。

都筑区に住んでいる50歳以上の男性が全例PSA検診を受けると250人の前立腺癌がみつかる計算になりますが、都筑区で前立腺がんで1年間に死亡する人は15人

寿命に影響しない癌は見つけないという戦略も考え始める時期ではあるのです。