前立腺がん・前立腺肥大症・PSAのページ

横浜市都筑区木村泌尿器皮膚科院長の木村明の日記とQ&A集から前立腺がん・前立腺肥大症・PSA関連を抜粋。

前立腺肥大症の治療法

薬物療法

薬物療法の主流は前立腺の筋肉をゆるめる薬(α1遮断薬)です。 α1遮断薬には、尿道抵抗を下げることに特化したものや、 前立腺だけでなく膀胱もリラックスさせて、夜間頻尿にも効果があるもの、 などがあります。

PDE5阻害剤にも前立腺の筋肉をゆるめる作用があり、2014年にザルティアが発売されました。 ED治療薬シアリスと同じ成分のため、前立腺肥大症用に処方されたザルティアがED目的に使われる危険があります。 それを防ぐため、ザルティア処方にあたっては、前立腺肥大症診療ガイドラインに沿うことが義務付けられました。

前立腺は男性ホルモンの命令で働いています。アボルブなどの抗男性ホルモン剤は前立腺を縮小させます。
 生薬やアミノ酸の複合剤も使用されます。1日3回の服用で、症状を軽快できます。

過活動膀胱を合併した場合の処方。

前立腺肥大症が原因で過活動膀胱を起こすこともあります。 過活動膀胱とは「トレイが近くなった、トイレが我慢できなくなった」といった症状です。 前立腺肥大症に伴う過活動膀胱に、α遮断薬と抗コリン薬を併用することがあります。

手術療法

 薬物による治療は蓄尿障害(頻尿、夜間頻尿、尿失禁)にはかなりの効果を発揮しますが、 排尿障害(尿線中絶、残尿感)が強い症例には充分な効果が得られないことがあります。

特に何度も尿閉を繰り返す大きな前立腺肥大症には手術が必要です。 前立腺肥大症は良性の病気ですから、その手術は排尿状態を改善するために本人が希望する場合に行うのが原則です。

しかし、症状のいかんにかかわらず、水腎症を起こしている場合など、手術がどうしても必要な場合があります。 医師からよく説明を聞き、納得のうえで手術を受けてください。

TURP

スタンダードとされる手術法は、尿道から電気メスつきの内視鏡を入れて削り取っていく経尿道的前立腺切除術(TURP)です。

右葉の膀胱頚部を削り始めたシーン。

左葉の前立腺を切除しているところ。

HoLEP

HoLEP手術(経尿道的ホルミウムレーザー前立腺核出術)。TUR-Pが、例えば西瓜をスプーンですくって食べているようなものだとすれば、HoLEPは、みかんの皮を剥いてから食べるようなもの。 こちらをご覧ください。

その他

高度の排尿障害(尿閉・多量の残尿)にもかかわらず、手術を受けられない方には、自分でカテーテルを尿道から膀胱に入れて尿を排泄する 間欠自己導尿を指導します。
その他、カテーテル(導尿管)を留置する方法もありますが,治療というよりも、一時的に尿路を確保する処置といったほうがようでしょう。

生活上の注意

 軽い体操や散歩など、適度の運動をし,過度の飲酒はひかえ,便秘をしないように心がけてください.便秘になると、直腸にたまった糞便が尿道を圧迫します。トイレが近くなるからといって、水分を遠ざけてはいけません。適量の水分は補給することが必要です。ただし、夜間トイレに行く回数が多い方は、夕方から水分はひかえめにすると良いでしょう。尿は我慢せず、すぐトイレに行くようにしましょう。入浴は、適温でゆっくりと,全身の血行をよくするように心がけます。長時間すわったままの状態(長旅、マージャン、テレビを同じ姿勢で見るなど)は避けるようにし,時々は立って、身体を動かすようにします。  かぜ薬などには,症状を悪化させる成分が含まれている場合がありますので,服用するときは、医師に相談してください。  繰り返しになりますが、現在のところ薬は症状を改善するだけです。苦痛を除くことは確かに大切なことですが、尿が出にくいという症状がなくても、手術が必要な場合があります。 前立腺肥大症で頻尿になっているのを「尿は良く出ています。出すぎて困るぐらいです」と答える患者さんがいらっしゃいます。慢性の病気ですから、尿の勢いが落ちていることを自覚してない方もいらっしゃいます。 医師の判断には医学的根拠があるのですから、よく説明を聞き、納得のうえで手術を受けてください。 同じことは、薬を飲み続ける場合にも言えます。勝手に治ったと判断しては困ります。

ガンへの移行

 前立腺肥大からガンになることはありません。ただ、合併している率は高いのです。前立腺肥大症患者にガンの発見される律は、5%~20%程度です.一方、ガン患者はほぼ全員が前立腺肥大症を合併しています。  このため、検診が大切です。欧米では半年に1度は前立腺の健康診断が実施されるようになっています。前立腺は消しゴムぐらいの軟らかさで、肥大症でも変わりませんが、硬いとガンが疑われます。泌尿器科医が、直腸に指を入れてしらべるだけの簡単な検査です。血液検査では,前立腺抗原(PSA)もガンの発見に有効なことが最近明らかになり,人間ドックでの検査項目に加えられ始めています.

予防法

 精液を作るという役目が終わって,前立腺は年齢とともに萎縮していくのが普通ですが,約三割の人では五十代から前立腺の肥大が始まります。ただ、肥大の進行度合は、個人差が大変に大きいのです。また、なぜ年とともに前立腺が肥大するかよくわかっていません。説としては、生殖器としての能力の減退を、増殖することでカバーしようとしているのだという考え方、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れてゆくためとする見方があります。以前,性生活についての患者へのアンケート調査が行われたことがあり,前立腺肥大症の人には若い頃から年をとるまでずうっと精力的だった人が多いという結果が出ています.これに比べ,前立腺ガンの人には,やはり若くからsexに目覚めた人が多いが,終しまいの年齢も速いという結果が出ています.

前立腺肥大症についてのQ&A