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超音波医学会専門医。腎尿管結石・前立腺癌・肥大症の診断が得意です。 膀胱炎・尿道炎・男子不妊症では、院長自身が顕微鏡検査(尿・精液)を行います。 皮膚科は男性非露出部に自信があります。

PSA検診で死亡率低下:初のランダム化比較試験の結果

エビデンスレベルが最も高いとされるランダム化比較試験
2007年の班研究の段階ではPSA検診で死亡率が低下するというランダム化比較試験はありませんでした。
Fritz H. Schroder:Screening and Prostate-Cancer Mortality in a Randomized European Study.N Engl J Med 2009;360:1320-1328.
という論文が、権威あるThe New England Journal of Medicineの2009年3月26日号に出ました。欧州での調査です。

彼らが集計したのはPSA検診群が72952人と対象群が89435人。
平均9年間のフォロー中に、PSA検診群では5990人(8.2%)の前立腺癌が見つかり、対象群でも4307人(4.8%)の前立腺癌が発生しました。

検診群のうち214人(0.29%)が癌死し、対象群のうち326人(0.36%)が癌死しました。
PSA検診をすることにより死亡率が0.29%から0.36%へと20%(0.29/0.36=0.8)減少することが示されたわけです。

この減少率は危険率4%で有意な結果です。
危険率4%というのは、死亡率に偶然20%も差が出ることは(72952人と89435人も調査した場合)100回に4回しかない、ということです。
PSA検診群72952人と対象群89435人をそれぞれ1万人に換算すると、
検診群1万人当たり821人前立腺癌が見つかり、29人が前立腺癌で死亡、
対象群1万人当たり482人前立腺癌が見つかり、36人が前立腺癌で死亡したことになります。

さらに1410人当たりに換算すると
検診群1410人当たり115.4人前立腺癌が見つかり、4.1人が前立腺癌で死亡、
対象群1410人当たり67.7人前立腺癌が見つかり、5.1人が前立腺癌で死亡したことになります。
PSA検診を1410人に行えば、48人多く前立腺癌が見つかり、そのおかげで前立腺癌死を一人減らせることになります。

言い換えると、一人の前立腺癌死を減らすために、48人余計に前立腺癌患者を治療しなければならない、ということにもなるわけです。
その後、この論文の元データが詳細に検討され、
健診群に割り当てられたのにPSA検査を受けなかった人や非健診群に割り当てられたのにPSA検診を受けた人をはずして計算しなおしたら、
PSA検診は死亡率を30%減らす、という計算になったそうです。

1年半後の2010年8月のLancet Oncologyに、
スウェーデンでおこなわれた20000人を対象にしたPSA検診の結果が発表されました。
この論文の結論は、一人の前立腺癌死を減らすためには、293人にPSA検診を行い、12人余計に前立腺癌患者を治療する必要がある、
ということでした。
結論の数字の大きな違いは、非健診群に割り当てられたのに、PSA採血を受ける人がスウェーデンでは少なかったことが一因のようです。

The New England Journal of Medicineの2009年3月26日号には、
Gerald L. Andriole:Mortality Results from a Randomized Prostate-Cancer Screening Trial.N Engl J Med 2009;360:1310-1319.
という論文も出ています。こちらは米国のデータで、PSA検診で死亡率は減少しなかったというものです。
ただし、こちらは、研究にエントリーする前に、44%の人がPSA検査を1回以上受けており、ランダム化比較試験としてのデザイン自体に問題のある調査です。


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