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2007年10月22日読売新聞p14 がん検診1 前立腺 上


横浜市の〇〇さん(64)は今年1月、近くの診療所で健康診断を受けた際、血液を採取し、前立腺がんを見つけるための腫瘍マーカーのPSA(前立腺特異抗原)を調べてもらった。
3歳上の兄が3年前、前立腺がんで手術を受けた。「自分もそろそろ年齢的に気を付けた方がよいかな」と考えたのが、検査のきっかけだ。
PSAの値は、基準値(4ナノ・グラム/ミリ・リットル)をわずだが上回る4・15。医師から「がんの疑いがあるので、前立腺の組織を針で採取する生検を受けてください」と告げられた。
「『う~ん来たかぁ』という感じで、最初はショックでした」と〇〇さん。しかし家に帰って妻とも話すうち、「がんと決まったわけではない。PSAについても、もっと調べてみよう」と思い直した。
父親をがんで亡くしたこともあり、50歳を過ぎたころから、定期的に大腸の内視鏡検査や胃の検査を受けている。「自分の健康は自分で守ろう」と、がんには人一倍、気を使ってきた。
もっとも、そんな思いが行き過ぎ、不安ばかりが募る結果になった苦い経験もある。
5年前、会社の診療所で、軽い気持ちで「がんの検査に使う腫瘍マーカーをすべて調べてほしい」と頼み、血液検査を受けた。
すると、8種類のうち4種類が「陽性」と出た。内視鏡、CT(コンピューター断層撮影)などの検査をしても異常は見つからなかったが、一時は「がんではないか」とあわてた。
これらの腫瘍マーカーは、がん治療後の経過を調べる際に使われるが、がん以外の原因で数値が高くなることも多く、通常、健康な人の検診には使わない。検査の意味を理解し、数値だけで一喜一憂しないというのが、その時の教訓だ。
〇〇さんは、ホームページでPSAの解説をしている同市の木村泌尿器皮膚科の木村明さんを受診。超音波装置で見た前立腺の大きさから、がんである確率は数%程度と推測された。そこで、体に負担の大きい生検は行わず、様子を見ることになった。
「がんを見つけるのは大切だが、不要な検査はないに越したことはない」と石崎さん。PSAは8月の検査でも4・12と横ばいだ。
がんは日本人の死因で最も多い。今年6月策定のがん対策推進基本計画で、検診の普及が掲げられた。
だが、様々な種類があるがん検診には、がんの死亡率を下げるのに有効とされる方法がある一方、有効性が不明確なものも多い。前立腺がん検診の効果を巡っても賛否が分れる。
がん検診をどう利用したらよいかを考える。

前立腺がんとPSA検診
高齢化に伴い、日本での前立腺がんの死者は年々増え、2005年に9200人。検診は10年ほど前から普及し、受診率は推定3~5%。日本対がん協会のまとめでは2005年度に約26万6000人が受診、1670人余に前立腺がんが発見された(発見率0・65%)。

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