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2007年10月23日読売新聞p18 がん検診2 前立腺 下


前立腺がん検診に使われる血液検査のPSA(前立腺特異抗原)が、基準値(4ナノ・グラム/ミリ・リットル)を超えたからといって、ただちに「がん」とは言えない。前立腺肥大など、がん以外の原因でも数値が上昇するからだ。
最終的にがんの診断をするには、精密な検査が必要になる。前立腺に針を刺して組織を取り、顕微鏡で調べる検査で、「生検」と呼ばれる。
千葉市の男性(67)は2004年、人間ドックで、医師から「PSAも調べませんか」と勧められた。どんな検査をするのか尋ねたところ、医師は「すでに取った血液を使うので、何もしません」。男性は「それだけで済むなら」と、うなずいた。
結果は、基準値をわずかに超える5・7。「生検を受けて下さい」と医師は言った。「針を刺す」と聞き、「そんな痛そうな検査の話は聞いていない」と男性は色をなした。そして、インターネットで見つけた木村泌尿器皮膚科(横浜市)を受診した。
院長の木村明さんによると、PSAが10以上の場合、がんが見つかる確率は50%以上であるのに対し、PSA4~10未満では、がんの確率は25~30%。そこで、PSAが10以上の場合は全員に生検を行うが、4~10なら、患者の希望も踏まえ、すぐに生検はせず、様子を見ることにしている。
生検には、頻度は少ないものの、痛みや、血尿といった合併症もある。「PAS4~10の人すべてに生検をしたら、結果的に7割以上の人が不要な検査を受けることになる。無駄な検査は極力しない」と木村さんは話す。
前立腺の大きさには個人差があり、大きければPSAの値も高めに出る。木村さんは、超音波検査で調べた前立腺の大きさとPSAの値から、がんの確率を簡単な計算法で示し、患者の参考にしてもらう。
この男性の場合、前立腺が大きいうえ、本人の希望もあり、生検は見合わせた。数か月おきにPSAを測り、3年後の現在も数値は4~5前後だ。
逆に、自治体が行う集団検診などの場合、PSAが10以上でも、生検を受けない人が多いという問題もある。木村さんは「PSAは血液で簡単にわかると勧められるが、その後の生検については事前に十分に説明を受けていないせいではないか」と、医療側の説明不足を指摘する。
ただ、生検で早期がんが見つかっても、前立腺がんにはおとなしい性質のものもあり、すぐに治療するか、様子を見るか、方針が医師によって異なる。不必要な治療をどう防ぐかも、課題となっている。


前立腺がんの診断  
血液検査のPSAのほか、超音波検査、直腸から指を差し入れて前立腺の硬さなど調べる直腸診が行われる。
生検は、直腸に差し入れた超音波検査装置で前立腺を見ながら、6~12か所程度に針を刺して組織を採取し、顕微鏡で調べる。

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