アメリカで開始された腹腔鏡下前立腺全摘の治験について
2008年10月21日、
Dr.Krongradが、慢性前立腺炎に腹腔鏡下前立腺全摘を行う、という治験(PhaseⅡ)を開始しました。
現在、患者募集段階で、
30歳以上、
NIH症状スコアが25以上、
症状が1年以上続いている、
抗生物質などでの治療が無効、
麻酔をかけられること、
英語が話せること、
が条件です。
Dr.Krongradのサイトには、手術で良くなった人が実名・写真入りで登場しています。
術前には、肛門の奥にゴルフボールが入っているような痛みのため、大好きなドラム演奏もできなかったのが、
術後は、会議などでドーナツ座布団を使わずに座っていられるようになったそうです。
一度切除してしまえば元には戻せない、勃起能は残せるかもしれないが、射精・妊娠能力は確実になくなる手術を癌患者以外に行うことには、私は賛成できません。
この治験が治験審査委員会の承認が得られたのは、
患者さん個人のQOLが著しく損なわれる病気であること以外に、
アメリカ国内だけでも、前立腺炎の患者が年に延べ200万回医者を訪れ、医療経済上も大変な問題である事、
が関係しているようです。
そもそも治験はその治療が有効かどうかわからないから行われるものです。
この治験も有効性が証明できなかったという結論になりえます。過度な期待は抱かずに、結果を見守るのが得策といえるでしょう。
偉大な仮説が正確な科学的手法により打ち砕かれた
Dr.Nickelは前立腺炎に対するα-ブロッカー(前立腺肥大症治療薬)の治験の結果を2008年春のアメリカ泌尿器科学会で発表。
偽薬に比べアルファーブロッカーが有用というデータを示す事ができませんでした。
偉大な仮説が正確な科学的手法により打ち砕かれた、と彼は結論しました。
前立腺炎にα-ブロッカーが有効だろうというのは、皆が期待していた仮説だったのです。
RCT(無作為比較試験)で抗生物質・消炎剤の有効性がすでに否定されていたからです(Nickel 2003年)。
このページに彼の2008年春の発表の様子が公開されています。
(2008.11.16)
RCT(無作為比較試験)では、α-ブロッカー・抗生物質・消炎剤・
フィナステリドの有効性がすでに否定されてしまいました。
これらの治験では、
症状スコアが改善するかどうかが効果判定の基準だったわけで、私はこの症状スコアが必ずしも病状を反映していないのも、問題だと感じています。
さらには、4週間とか4ヵ月間投薬して、その後、症状スコアが4下がったとしても、それで患者さんが前立腺炎から開放されるわけではありません。
2010年4月の日本泌尿器科学会に来日した
Dr.Nickelは新しく、
雪の結晶仮説を提唱しました。
前立腺炎は一つの病気ではない。6つの要素があるというものです。
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The percentage of patients positive for each domain was 52%, 34%, 61%, 16%, 37%, and 53% for the urinary, psychosocial, organ-specifi c, infection, neurologic/systemic, and tenderness domains, respectively.
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慢性骨盤痛の原因。
排尿障害 52%
うつなど精神的な側面 34%
前立腺が原因 61%
細菌感染 16%
神経痛 37%
骨盤筋の緊張 53%
感染症の割合が16%というのは、私のクリニック(2005年4月から2008年3月までに、6ヶ月以上続く骨盤痛を主訴に147例の男性が来院されました。大多数の138例は前立腺に細菌感染を認めませんでした。)の状態と同じです。
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排尿障害(52%)に有効な治療
ハルナール・フリバス・ユリーフ
ベシケア・デトルシトール・ウリトス・ステーブラ
手術(特殊な場合のみ)
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精神的な側面(34%)に有効な治療
カウンセリング
抗うつ剤
精神科に紹介
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前立腺が原因(61%)に有効な治療
ハルナール・フリバス・ユリーフ
アボルブ・フィナステリド
セルニルトン
前立腺マッサージ
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細菌感染(16%)に有効な治療
抗生物質
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神経痛(37%)に有効な治療
鎮痛剤
代替療法(鍼灸・カイロプラクテイツク)
ペインクリニックに紹介
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骨盤筋の緊張(53%)に有効な治療
セルシン・デパス
骨盤筋体操
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