慢性前立腺炎は会陰部や下腹部,陰嚢部などに鈍痛や不快感を感じる病気で、頻尿,排尿痛,残尿感などもみられます。射精前後に痛みが起こることもあります。
前立腺分泌液の検査をもとに3タイプに分類されます。 |
慢性前立腺炎という病名は、陰部や下腹部に不快感を感じる青年男性にあまりにも簡単に付けられる病名であり、患者さんに前立腺の病気という先入観念を植え付けてしまいがちです。
前立腺分泌液の検査をやらないで、尿道炎でも前立腺肥大症でもないから、たぶん前立腺炎だろうという感じで診断されることがあるのです。 このページを読まれているあなたにお尋ねします。 あなたはどのような検査をもとに慢性前立腺炎と診断されましたか? 前立腺分泌液の検査(もしくは前立腺マッサージ後の検尿)は受けましたか? 検査の結果、慢性細菌性前立腺炎・非細菌性前立腺炎・前立腺痛のどれだと言われましたか? 非細菌性前立腺炎・前立腺痛は前立腺の病気であるとは限りません。 前立腺炎と診断された方は担当医に、どのタイプの前立腺炎なのかしっかり聞きましょう。 そういった説明を受けていないか、もしくは理解していないままで、ドクターショッピングを続けている患者さんを時々見かけます。 すでに治療中で、当院への転院をお考えの方にお願いします。 どのタイプの前立腺炎なのか、細菌性なら菌の名前まで、前医から聞いておいて下さい。 さらに横浜市・川崎市以外の方は転院のメリットがありません。理由はここをクリック。 |
慢性細菌性前立腺炎では、前立腺のマッサージで、分泌腺内にたまっている膿性分泌物を排出させます。射精にも同じ効果があり、週1~2回行うように勧めている医師もいます。 細菌が消失するまで、2~6週間程度抗菌剤を内服してもらいます。 | 非細菌性前立腺炎・前立腺痛のなかにはいろいろ基礎的な病態が含まれている可能性があり、さらに6つに分類できます。
1.骨盤腔内のうっ血を基盤とした病態と考えられる症例、 2.骨盤底筋の緊張症状が特に強い症例(会陰部や下腹部の疼痛や不快感以外に症状がないという患者さん)、 3.尿流測定に異常を認め,排尿困難が疑われる症例、 4.間質性膀胱炎に似た病態と考えられる症例、 5.精神的要因の関与の強い症例、 6.それ以外の症例(病因も病態もいまだに全く不明)です。 |
1 | 前立腺痛症例のうちで骨盤腔内のうっ血を基盤とした病態と考えられる症例には,漢方薬の![]() |
2 | 骨盤底筋の緊張症状が特に強い症例(会陰部や下腹部の疼痛や不快感以外に症状がないという患者さん)には、筋弛緩作用のあるマイナートランキライザーや漢方薬などを投与します。海外には骨盤筋をリラックスさせるトレーニングを指導している大学もあります。 |
3 | 尿流測定が異常な症例には,さらに尿流動態学的検査を行います。機能的な閉塞では、α-ブロッカー(前立腺肥大症治療薬)を投与、 器質的な閉塞では、経尿道的に膀胱頚部の切開術や切除術(TUR-Bn)が行われることがあります。 |
4 | 頻尿、残尿感、下腹部痛(特に尿が貯まったとき)が間質性膀胱炎のためである場合は、膀胱水圧拡張術が有効な事があります。 |
5 | 職場でのトラブルなど精神的な問題が背景にあることも多く、心療内科や神経科を受診をお薦めします。 |
6 | 会陰部や下腹部に鈍痛や不快感を感じても、その原因が前立腺にあるとは限りません。
肛門周囲の不快感のために長時間座っていられない状態は、整形外科医は馬尾神経障害と診断し、麻酔科医は陰部神経痛と診断します。
何科の医者がどんな病名をつけても、短期間に治癒させるのは困難な病態であり、慢性骨盤疼痛症候群と呼ぶべきでしょう。
女性にも慢性骨盤痛はあります。前立腺がない女性にも、前立腺炎とそっくりな症状で悩んでいる患者さんは多いのです。 |