院長が勤務医時代に作ったサイト
直腸への癒着
Q.父(62才)が、先日、前立腺ガンで、前立腺摘出の手術をうけました。
現在入院中です。リンパへの転移はなく、摘出手術を終えました。術後、家族で説明を受けたとき、”少し、直腸への癒着があった。生検によるものなのか、浸潤なのかを調べる”と言われました。そして、先日、先生にお会いしたときに、母が
”精嚢へ浸潤している”と言われたそうです。父には、無事手術を終えたことのみしかまだ話しておらず、父が近くにいたため、後日改めて、お話を伺うと伝え、詳細はまだ聞いてはいない状況です。
その話を母に聞き、なぜ、直腸と言っていた話が、精嚢なのか、浸潤(転移と解釈してよいのでしょうか?)というのは手術前にはわからないものなのか(わかれば、一度に切除というような方法もあったのではと素人的には思います。)、また、前立腺におさまっていないガンだったのならば、手術を受けたことは無駄だったのではないか、というような疑問がわいてまいりました。
教えていただきたいのは、これらの疑問と、そして、今後の治療のことです。
一応、先生のお話では、放射線ということをおっしゃっていたようなのですが、
それがベターな選択なのでしょうか。また、放射線治療というのは、入院が必要なものなのか、どのくらいの頻度でどのくらいの期間行われるものなのか、
教えていただきたく思います。
お忙しい中、お手数をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。
A.前立腺摘出の際、精嚢も一緒に摘出します。主治医はお父さんの精嚢を直腸からはがす際、癒着していることに気づいたのだと思います.
このご質問と基本的に同じですが、精嚢浸潤を術前に正確に診断することはできません。
今後の治療方針ですが、すぐに放射線療法を開始する事はあまりありません。根治手術後PSAが再上昇してくるまでは無治療で経過観察、
PSAが高値になったら、CTや骨シンチで再発部位を確認し、放射線を当てられる場所であれば放射線療法、広い範囲に転移していればホルモン療法になることが、多いです.
放射線療法ですが、都立駒込病院では、週5回、6-7週間の照射で、原則入院でやっていました。
外来通院でやる病院もあるようですね。
Q.お忙しい中、早々にご丁寧な返信を頂き、本当にありがとうございました。週明けに主治医からの説明が控えており、心強く思っております。
大変申し訳ありませんが、また幾つか、お聞きしたいことが出てまいりました。非常に基本的な質問なのかも・・・と思いますが、よろしくお願いいたします。
①父の件ですが、先生のお返事から、”精嚢は既に摘出されている。ガンは、前立腺から精嚢を通して直腸に浸潤しており、直腸のガンに対して今後治療がある”と解釈しているのですが、この解釈で正しいでしょうか。理解力が足りず、申し訳ありません。
②もし、直腸にガンが残っているとすれば、それは、イコール直腸ガンということになるのでしょうか。ここですごく混乱しています。前立腺を取り去ってなお、PSAという前立腺と名の付く抗原の数値で診断がつくということ、直腸ガンであれば、泌尿器科でなく、主治医も代わるのかや、直腸ガンには放射線治療はあまり行わないと国立がんセンターのホームページに書かれてあったことなど、うーんよくわからない、と思うことが多々あります。きっと、病名としては前立腺ガンということになるのだろうと思うのですが・・・。転移・再発・浸潤といった区別がついてないのがわからない原因ではと思っています。
基本のキのような質問で、また、度々質問させていただくことをお許し下さい。
A.前立腺は男性ホルモンの命令で精液を作るところで、PSAは精液のタンパクの一部が血液に流れ込
んだものです。
前立腺がんは、精液のタンパク
をつくる性格や男性ホルモンの影響を受けて増殖する性
格を持ったまま癌化するものがほとんどです。
そして、前立腺癌は膀胱や直腸に浸潤しても、肺や骨に転移しても、精液のタンパク(PSA)をつくる性格や男性ホルモンの影響を受けて増殖する性格は変わりません.日本人がアメリカに移住しても、黄色人種でごはんと刺身が好物のようなものです。前立腺癌の直腸浸潤と、直腸粘膜から発生した癌とは黄色人種と白色人種ほどの違いがあります.
日本人のことは、日本大使館が責任を持つように、前立腺癌がどこに転移しようが、泌尿器科でみます。
Q.またも早々に、非常にわかりやすいご回答を頂き、感謝しております。
おかげさまで主治医の説明も、よく理解することが出来ました。
今後、どのように転ぶかは、PSA次第ということで、不安は残りますが、前立腺ガンにかかった人なら、誰しも同じ気持ちだと思うので、前向きな気持ちでサポートしていきたいと思っています。
また、何かありましたら、お力をお貸し下さい。本当にありがとうございました。