プロペシアがグリーソンスコアを上げた訳
プロペシアが前立腺を縮めたため、6箇所生検で癌が見つけやすくなった、プロペシアはグリーソンスコア8の部分を見つけやすくしただけ。
土曜日の講演会はアボルブの話というより、前立腺癌のお話。
ブログで紹介するには難しいお話でした。
懇親会で、MRさんに、「明日のブログで
アボルブについて解説すると予告したけど無理。」と言ったら、
MRさんからは「いや、先生のブログを読んで勉強している同僚は多いんです。是非アボルブについて書いてください。」と頼まれました。
昨日のブログは難しい内容になってしまいましたが、マニアックついでに、
今日は、
プロペシアで行われた前立腺癌予防治験の結果を、どう解釈するかの解説です。
55歳以上の18000人の男性が、
プロペシアを飲む群とプラセボ(偽薬)を飲む群にランダムに振り分けられました。
7年内服後に、全例が
前立腺生検(6箇所生検)を受けました。
その結果、プラセボ群では24%に癌が見つかりました。悪性度が高い癌(
グリーソンスコアが7以上)だったのは5%でした。
一方、プロペシア群では18%に癌が見つかりました。グリーソンスコアが7以上だったのは6%でした。
この結果は、プロペシアは前立腺癌を減らすが、悪性度の高い癌はかえって増える、と解釈されました。
しかしこの結果は、プロペシアが前立腺を縮めたため、6箇所生検で癌が見つけやすくなった、という側面で見直すこともできます。
このランダム化比較試験に組み込まれた人の50%には、治験開始時に、すでに、前立腺のなかに、大人しい(グリーソンスコアが6ぐらい)癌と性質の悪い(グリーソンスコアが8ぐらい)癌があったとします。
この図で、赤い丸がグリーソンスコア8の癌。緑の丸がグリーソンスコア6の癌。黄色が正常部分とします。
プラセボ群では7年後には、左下のような感じ、正常部分もグリーソンスコア6の部分も、グリーソンスコア8の部分も少しずつ大きくなります。
ここに6本針を刺すと、グリーソンスコア6の部分が19%に、グリーソンスコア8の部分が5%に見つかります。
プロペシア群では7年後には、右下のような感じ、正常部分とグリーソンスコア6の部分は縮みますが、グリーソンスコア8の部分は少し大きくなります。
ここに6本針を刺すと、グリーソンスコア6の部分が12%に、グリーソンスコア8の部分が6%に見つかります。
プロペシアはグリーソンスコア8の部分を見つけやすくしただけで、グリーソンスコア8の癌を増加させたわけではない、と主張することもできるのです。