こんな統計の使い方、あり?
PSAが前立腺癌の早期発見に役立つという事実まで否定されたかのように国民に伝わらない事を祈ります。
特定健康診査等実施計画を早々と作成し公開されている文京区介護保険部国保年金課の方、ご苦労様です。
でもちょっと統計の使い方に疑問を感じたところがあります。
「文京区の平成18 年度の国民健康保険の医療費総額は、約123 億円で年々増加傾向にある。」
事実なんでしょう。
「平成18 年5 月診療分における主要11 疾病(糖尿病、高血圧、心筋梗塞など)に要した医療給付費用額は、約1 億3,600 万円となり、全体の医療給付費(約6 億9 千万円)の19.6%を占めている。」
ちょっと待て! 何でここから5月診療分データに限るの?1月だとインフルエンザの医療費が、4月なら花粉症の医療費が突出するから?
こんな統計の使い方は詭弁です。花粉が飛ぶ頃の医療費のデータを使えば、医療費削減のため杉を伐採しろ、という論法に持っていけます。
ちょっとした事情で、昨日から半月間だけ読売新聞を取ることにしました。その家庭欄の医療ルネッサンスでは、メタボリックシンドロームの連載が始まっています。今日は阿波踊り体操で腹囲を減らした糖尿病の人の話。このあと、がん検診についての連載が続くんでしょうかね。
メタボリックシンドロームに重点をおいた
特定健康診査と、対策型検診としてのがん検診とはやはり密接に関わっているんでしょうか?
対策型検診としてのPSA検診を継続してほしい泌尿器科医にとっては、「有効性が不明な検診を続けるより、有効性が証明された検診の受診率を上げ、着実にがんの死亡率を下げるのが先」と主張する
がん検診研究班がライバルですが、がん検診研究班のライバルは泌尿器科医ではなく特定健康診査推進派なのかもしれません。がん検診研究班は、がん死亡率が下がることを早く証明し、
特定健診に予算を全部持っていかれないようにがんばっているのかも知れませんね。
何をすれば国民にかかる医療費が節約できるかの統計学者たちの論争(都合のよい統計資料とシミュレーションの上に築いた論理)の中で、PSAが前立腺癌の早期発見に役立つという事実まで否定されたかのように国民に伝わらない事を祈ります。ついでにアナウンス。今週土曜日、青葉公会堂で前立腺がんについての公開講座があります。お問い合わせは0120-003-638へ。
2007年10月17日の院長ブログ原稿
[横浜市都筑区センター南駅木村泌尿器皮膚科院長日記一覧]