木村泌尿器皮膚科

〒224-0032 横浜市都筑区茅ヶ崎中央51-1 TEL 045-949-3066

超音波医学会専門医。腎尿管結石・前立腺癌・肥大症の診断が得意です。 膀胱炎・尿道炎・男子不妊症では、院長自身が顕微鏡検査(尿・精液)を行います。 ここは、院長ブログの原稿倉庫です。

PSA検査のゆくえ


がん検診に関する厚生労働省の研究班がまとめたPSA検査のガイドラインについての取材を10月2日に受けました。そのテーマに関係した記事を今日見つけました。前立腺がん集団検診 「有効性」検証なき普及という記事が10月8日に載っています。泌尿器科医が「欧米で検証が進むこの時期に、なぜ指針作りを急ぐのか」と反発しても、公衆衛生学者は「有効性が不明な検診を続けるより、大腸がん検診のように有効性が証明された検診の受診率を上げ、着実にがんの死亡率を下げるのが先」と議論はすれ違い。やはり限られた税金をどこに優先的に使うべきかの議論の中で、前立腺癌検診は、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん検診の仲間入りが見送られたようです。基本健康診査から特定健康診査へと変更される来年4月、横浜市で基本健康診査のオプションとして行われていたPSA検査はなくなる運命のようです。がん検診に格上げしてもらえなかったのですから。
この件についての私の意見は今日少し改定しました。この間の特定健康診査についての勉強成果が少しだけ入っています。
私が強調したいのは、
1.死亡率が下がるデータがまだないだけで、死亡率が下がらなかったことが証明されたわけではないこと、
2.任意型検診(人間ドックなど)でのPSA検査も無意味とは言っていないこと、
です。集団全体の死亡率を下げることを目的としている対策型検診と、個人の死亡リスクを下げることを目的としている任意型検診とは別物です。良質な人間ドックは二次検診の必要性をちゃんと受診者に説明し、さらには「良質な検査と治療を提供している」と自分が信じる二次検診先を紹介してくれるなど、個人の死亡リスクを下げることに貢献しているはずです。
でも腹囲を測る住民検診を始めるのがきっかけで、尿潜血・血清クレアチニン・PSAが消えてしまうとは! 身長と体重を測ればBMIまで分かるのに、腹囲が85cmに何の意味があるの?

2007年10月11日の院長ブログ原稿


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