木村泌尿器皮膚科

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ここ数ヶ月でPSAが0.5まで上昇してきました。


Q.62才父についての相談です。
今年初め、前立腺ガンのため、全摘手術を受けましたが、ここ数ヶ月でPSAが0.5まで上昇してきました。PSA FAILUREということになるのだと思います。


そこで、お聞きしたいのが、今後の治療についてです。
①放射線治療と、ホルモン剤の治療、どちらになることが多いのでしょうか?
②再発と判断し、治療を進めていく判断基準を教えて下さい。
③0.5では、まだ、どこにガンがあるかわからないレベルと聞きました。そのような場合の放射線治療は、何をもって場所が決まるのでしょうか?
以上です。お手数ですが、お教え下さい。よろしくお願いします。

A.PSAが0.5では、CTなどで発見できるほど、癌は大きくありません。したがって放射線療法にはならないと思います。 PSAの再上昇内分泌抵抗性の癌を参考にしてください。

Q.お返事ありがとうございました。
放射線療法にはならないのではという事ですが、ということは、ホルモン療法 ということでしょうか?
ご回答を読み、少し驚きました。父は医師から、順序としては、まず放射線、最終手段としてホルモン療法と言われたと聞いていたからです。それも、早い段階でたたいておこうというように。すぐにでも始まりそうな様子でした。ですので、場所が特定できないはずなのに、どこに放射線をあてるのかと不安になり、先日質問をさせていただいた訳です。 度々申し訳ありませんが、もう少しだけ、詳しくお教え願えませんでしょうか?

すみません。もう一点お聞きしたいことがありました。
いろいろ拝見した中に、 ”ガン細胞を死滅させ、膀胱や直腸に障害を与えない方法での放射線療法”をやっているところはまだ少ないという旨の論文(でしょうか)が記載されていたページがありました。
この療法をとってらっしゃる医療機関をお教え願えませんか?



A.手術所見の説明はどうだったのですか?被膜浸潤、精嚢浸潤、尿道断端&膀胱断端での癌陽性などの所見(術後のステージ診断はCになります)があったのであれば、膀胱と尿道を繋いだあたりに再発しているのだろうと言う推理がなりたちます。手術時リンパ節転移があった(術後のステージ診断はD1になります)のであれば、骨盤全体に放射線をあてることになるのかもしれませんが、それならPSA FAILUREになるまで待たずにひきつづき放射線治療かホルモン剤の治療を始めたはずです。

Q.お返事ありがとうございます。
説明不足で申し訳ありません。精嚢浸潤がありました。リンパ節転移はありませんでした。お返事から見ますと、そこという予測をたててすぐにでも放射線治療ということになるのでしょうか。
度々本当にお手数をおかけしてすみません。
追加で質問させていただいた医療機関についても是非お教え下さい。

A.最初に選択した治療が失敗した後に選択される治療をSalvage therapyといいます。 今回お父さんにやろうとしているのはSalvage radiotherapyということになります。 アメリカの論文で時々登場する言葉ですが、Salvage radiotherapy(サルベージ放射線療法)については私は勉強不足ですので、コメントできません。 効果を疑問視する論文と、ある限られた症例には有効とする論文があったと思います。主治医に聞いて下さい。
”ガン細胞を死滅させ、膀胱や直腸に障害を与えない方法での放射線療法”はCTで写っている病変をねらって そこだけに放射線を集中させる原体照射という方法で70グレイ以上照射します。CTで写っていないものに漠然と当てるのには使用できないと思います。

Q.本当にお手数をおかけしております。ありがとうございます。
読ませていただいた限りではサルベージセラピーとしての放射線療法が極めて有効とは考えられず、どうすべきなのか、正直判断がつかずにおります。ホルモン療法は最終手段と言われていることもあり、現状でホルモン療法をとるのにも抵抗があるようですし。
放射線・ホルモンを問わず、治療を受けるにあたり、場所が特定できるまで、PSAの上昇を待つような方法を採れば、他へ転移が拡大するリスクが高まるといったような可能性はあるのでしょうか?
先生でしたらどのような治療を想定されるか、ご教示願えませんでしょうか。
度重なるメールで申し訳ありません。

A.どこをねらっていくら当てるか主治医に聞いてみましたか?
「先生でしたらどのような治療を」との質問ですので、以下、何のデータ(この前も言ったように、データがあるのに私が勉強不足なだけかもしれません)もなしに私的意見を述べます。
骨盤内全体に漠然と50グレイ当てる方針なら私はお薦めしません。
PSAが0.4を越えたら、いずれどこかに再発するとのデータがあります。今すぐLH-RHアナログによるホルモン療法を開始するか、
場所が特定できる大きさになるまで(PSAが4程度まで上昇)を待って、局所再発なら放射線、遠隔転移ならホルモン療法を選ぶ
という二つの選択肢があると思います。どちらがいいか私には選べません。
患者さんから他へ転移する可能性についての恐怖を訴えられれば、今すぐLH-RHアナログということになると思います。

Q.ご丁寧なお返事、ありがとうございました。
心より感謝しております。
本当に度重なるメールを申し訳なく思っております。
そうですか・・・・現時点での放射線、やはりおすすめではないのですね・・・
主治医は60グレイ照射、本人の話によればですが、恥骨のあたりをねらってと言われたと言っております。
ホルモン療法をとる場合、いつかは効かなくなる、どんどん強いものが必要になる、一度始めると一生続けねばならないという風に聞いているようですが、実際そうなのでしょうか。
それと、もう一つ教えていただきたいことがあります。
14日付の朝日新聞の夕刊に、PET(ポジトロン・エミッション・トモグラフィ)のことが載っていました。CT等で発見できない小さなガンも発見できるということらしいのですが、今回の父の場合、その適応は可能だと思われますか。
もし、それで場所が特定できるなら、確実な放射線治療も可能ではと考えているのですが。前立腺ガンの質問の域を越えているかと思いますが、ご存じでしたらお教えいただきたくお願いいたします。
ほんとうに、ほんとうに、度々の質問をお許し下さい。

A.ホルモン療法の限界は確かにあります。「前立腺癌の3割は最初からホルモン療法に抵抗性、残り7割のうち、半数はホルモンがずっと有効、半数はいずれ抵抗性になる。抵抗性になる症例はその半数が2年以内になる」というのが、昔の統計にあります。しかし、この統計がとられた頃は、PSAによる早期発見例などはない時代の、統計の対象がほとんど進行癌であった時代の成績です。
PET(ポジトロン・エミッション・トモグラフィ)のことは知りません。前立腺癌の画像診断に関する論文は目を通しているつもりですが、前立腺癌にPETが有効という話は知りません。

Q.この度は、ほんとうにありがとうございました。
度重なるメールにも、丁寧にお答えいただきましたこと、心より感謝いたします。非常に心強く、大きな支えとなっています。
また、何かありましたら、ご相談させて下さい。
どうぞよろしくお願いいたします。