泌尿器科医・木村明の日記

腎尿管結石・前立腺癌・肥大症の診断が得意な超音波医学会専門医。

拡散強調画像とグリーソンスコア


グリーソンスコア6のおとなしいガンの90%は拡散強調では写らない。グリーソンスコア7以上の悪性度の高い癌の85%は拡散強調で強信号を示す。

MRIはT2強調画像から、拡散強調画像へと進化しているようです。

T1強調は水素原子を映し、T2強調は水分子を映すものですが、拡散強調は水分子の移動しにくさを映すものです。

細胞がぎっしり詰まっている所では水は動きにくくなり、拡散強調画像では高信号になります。

正常前立腺細胞の間には、精液が蓄えられています。

精液内では水分子は磁場の傾きで流れるため、拡散強調画像では正常前立腺は低信号になります。

おとなしい(グリーソンスコア6の)癌は精液を作るという本来の前立腺の役目を忘れていないので、
拡散強調画像では正常前立腺と同じく、低信号になります。

グリーソンスコア7以上の悪性度の高い癌は、細胞がぎっしり詰まっているため、拡散強調画像では白く描出されます。

PSAが異常な人に片っ端から前立腺12か所生検を行った結果、
おとなしい(グリーソンスコア6の)癌が見つかることが最近問題になっています。

おとなしい癌では治療しないで監視療法を行うようになってきています。

グリーソンスコア6のおとなしいガンの90%は拡散強調では写らないそうです。

グリーソンスコア7以上の悪性度の高い癌の85%は拡散強調で強信号を示すそうです。

グリーソンスコア7以上の癌だけを見つけられる拡散強調画像は、前立腺がんに非常に有効な診断ツールなのです。

続く)。

2016年6月13日