
2007年12月27日読売新聞p14 読者の反響 中 前立腺がん
前立腺がんの最新治療やPSA(前立腺特異抗原)検診などについて取り上げ
た「病院の実力 前立腺がん」(9月3
~7日)、「がん検診 前立腺」(10月22、23日)には、約40通のお手
紙やファクスをいただいた。闘病中の患者やご家
族からの、治療や再発後のPSA値についての質問も多かった。
検診と、治療や再発後では、数字の示す意味も違う。木村泌尿器皮膚科医院院
長(横浜市)の木村明さんに解説をお願
いした。
PSAは、前立腺に異常があると血液中に増える。検診では4ナノグラム/ミ
リ・リットル以上が、精密検査の基準とされている。
埼玉県の男性(59)は昨年、前立腺の全摘手術を受けたが、その後の検査で
PSA値が0・1、0・2、0・
3と、じわじわ上昇し始めた。男性ホルモンを抑える薬を飲む治療を始めたとこ
ろ、0・1台に下がったが、「薬は、い
つまで飲み続けるのでしょうか」と、男性。
また別の男性からは、「PSAの診断基準値は4のはずなのに、0・いくつで
、なぜ再発と言われるのか」との質問も
あった。
前立腺が完全に切除されて、無くなっていれば、PSAはゼロのはず。そうならないのは、
「手術で取り残しがあったか、目に見
えない転移のせいで、前立腺細胞がどこかに残っているため」と木村さん。良性
細胞でもPSAはゼロにならないが、徐
々に上昇しているとがん細胞が増殖している疑いが強い。治療の後では、4以上
かどうかに意味はなく、上昇の度合いが重
要になる。
ただしPSAが0・3程度では、どこに再発があるかは分からない。「
抗ホルモン薬を続けるか、放射線治療を
始めるかは医師によっても異なり、どちらが良いか結論は出ていません」と木村
さんは話す。
一方、今年7月に前立腺がんで夫(74)を亡くした茨城県の女性は、骨転移
で31あったPSAがホルモン注射
で3月に0・06まで下がったにもかかわらず、その後、急速にがんが進んだこ
とに納得がいかなかった。前立腺がんは
、進行のゆっくりした、おとなしいがんだと聞いていたからだ。
実は、前立腺がんの中にもまれに進行の早い、たちの悪いタイプがある。通常
の前立腺がんが骨転移まで進んだ時はP
SAは数千まで上がることが多い。ところが、たちの悪いタイプのがんは
PSAを作る働きをせず、PSA値はあまり上昇しない。この男性のがんは、おそらくたちの悪いタイプだった見られ、
この女性も「説明を聞いて、ようやく胸
のつかえが取れました」。
数字の持つ意味は、治療の場面によって様々。納得できるまで、医師の説明を
聞きたい。