木村泌尿器皮膚科

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LH-RHアナログを使用していても去勢手術?


Q.74歳の父のことで質問させてください。

父は1995.12、70歳の時に泌尿器科の医院で前立腺ガンと診断されました。そのときPSAは400以上あり、直ちにホルモン治療を開始しました。

その結果、1月後にはPSAは19、2月後には3まで下がり、それ以降1以下に安定しました。

その間MRI、骨シンチ等の検査を受け、転移の兆候は見られないとのことで、全摘手術を奨められ、総合病院を紹介してもらいました。

サンデージャポン

そこでは当初PSAが400以上あったことから、リンパ節への転移の可能性が大きく、高齢でもあるため放射線治療が選択されました。

1996.9に放射線治療を受け、その後は元の主治医のもとでホルモン療法を続けています。

サンデージャポン

その間ずっとPSAは0.05以下を維持していたのですが、昨年秋から肛門部に痛みが出だし、特に便がたまった時に痛いとのことで検査をしてもらいました。

その結果前立腺がはれており、それが尿管や肛門を圧迫していると診断されました。ただしPSAは相変わらず0.05以下のままなのでガンではなく炎症と判断されたらしく、抗生剤による治療をおこないましたが効果ありませんでした。

その後MRIや触診から、ガンの再燃の疑いがあるとのことで、現在去勢手術を奨められています。

PSAはあいかわらず0.05以下の状態です。

私は両親と遠隔地で暮らしており、詳細な話は聞けておりませんが、①MRIや触診で判るほどにガンが成長してもPSAが低い値を示し続けることがあるのか?②LH-RHアナログを使用していても、さらに去勢手術をして効果があるのか? の2点が大きな疑問と感じております。  この件に関して、ご意見いただければ幸いです。

去勢手術

A.前立腺は男性ホルモンの命令で精液を作るところで、PSAは精液のタンパクの一部が血液に流れ込んだものです。
前立腺がんは、精液のタンパク をつくる性格や男性ホルモンの影響を受けて増殖する性 格を持ったまま癌化するものがほとんどです。しかし、 中には悪性度が強くホルモン療法が効かず、PSAも低い 癌細胞もいます。

男性ホルモンは脳の一部である下垂体から出るホルモン (LH-RH)により刺激を受けて、精巣と副腎から分泌さ れます。治療としては、この男性ホルモンがつくられる 過程を抑えるか、前立腺に作用しないようにすればよい わけです。従来から行われていたのは男性ホルモンが多 くつくられる精巣自体を摘除する方法(去勢術)です。 これは麻酔により痛みをとり除き、下腹部や陰嚢部に切 開を加え、両側の精巣をとり出します。その他、男性ホ ルモンを抑える作用がある女性ホルモンや抗男性ホルモ ン剤を1日に数回内服する方法や、下垂体に作用して男 性ホルモンを去勢術を施行した時と同じくらいに低下さ せる薬(LH-RHアナログ)を月に1回皮下注射する方法 です。いずれの方法も治療効果には差がないとされてい ます。しかし、LH-RHアナログが無効になった患者さん に去勢術を薦める医者は少なくありません。私もその一 人で、その結果よくなった患 者さんを知っています。
週刊現代の木村明

Q.お返事のお礼が遅れて申し訳ありませんでした。今回、父の主治医にお会いして話を聞くことができました。基本的には先生のお返事と同様な趣旨でした。 おかげで納得の上で去勢術を受けることになり、大変感謝しております。まずは御礼申し上げます。今後、また何かありましたらご相談させてくさい。