2015年5月1日 テレビ神奈川「ありがとッ」
木村泌尿器皮膚科木村 明
『過活動膀胱と似た症状を起す病気に、膀胱がんや 前立腺がんなどもあります。』
過活動膀胱の診断に必要な検査は、尿検査と残尿測定 です。血尿や細菌尿がないか、腹部超音波検査で残尿 がないかをチェックします。治療には膀胱の収縮を 抑える薬を使うのですが、残尿が多い人には使用でき ません。尿閉といって排尿できない状態になることが あるからです。
動物は戦っている最中は排尿しません。休息の時に 排尿します。戦闘中はアドレナリンが分泌されて尿道 を締め、休息の時にコリンが分泌されて膀胱が収縮 します。
過活動膀胱によく処方されるのは抗コリン剤で、膀胱 の収縮を抑えます。
抗コリン剤は胃薬や風邪薬として昔から使われて いましたが、過活動膀胱の治療薬として登場したのは 2006年のソリフェナシン・トルテロジン、200 7年のイミダフェナシン、2014年のフェソテロジ ンです。膀胱の収縮力を抑える作用が強い薬ほど尿閉 などの副作用のリスクが高いので、患者さんに合わせ て使い分けます。
2011年にβ作動薬という新しい過活動膀胱治療 薬が登場しました。アドレナリンは膀胱を拡張させる 働き以外に心拍数を増やしたり、気管支を拡張したり して、体を戦闘態勢にします。膀胱にあるアドレリン 受容体がβ3であることを、1999年日本人泌尿器 科医が発見しました。β3作動薬を開発したのも日本 の製薬メーカーで2011年に発売しました。唾液が 減って口が渇く、腸が動かなくなって便秘になると いう抗コリン剤の副作用がありません。海外でも発売 されています。この企業は前立腺肥大症の標準治療薬 となっているタムスロシンも開発しました。
『15年前のスカンジナビア泌尿器科学会はタムスロ シンがヨーロッパでも処方され始めた時期でした。』