SessionⅠ
「症例から学ぶ OAB診断と治療 ー パネルディスカッション ー」
パネリスト:木村泌尿器皮膚科
院長 木村 明 先生
平成19年10月27日 港北OABフォーラム2007
症例呈示
【 症 例 】20歳 男性
【 主 訴 】頻尿、残尿感
【 経 過 】2004年から、頻尿、残尿感を訴える.
これまで他院で“前立腺炎”として治療を受けていた。
2006年4月、当科受診。
Question 1 この症例に対し、どのような検査を行いますか?
①検尿:OABに必須
②残尿測定:OABに必須
③排尿日誌:膀胱容量や1日尿量を知ることができる
④膀胱前立腺エコー検査:前立腺炎と他院で診断されているため
⑤尿流検査:排尿障害の有無も参考になるため
⑥前立腺分泌液:前立腺炎と他院で診断されているため
【 経 過 2 】桂枝茯苓丸とバップフォー(プロピベリン)10mgを初診日に処方。
1週間後、残尿感不変のため、バップフォー(プロピベリン) を20mgに増量した。
さらに2週間後、頻尿不変のため、ポラキス(オキシブチニン) 6mg 分3の処方に変更し、 この処方を半年間続行した。2006年11月、排尿後不快感がさらに悪化した。
桂枝茯苓丸を加味逍遥散、当帰芍薬散などに変更し、ポラキス(オキシブチニン)をデトルシトール(トルテロジン)に変更するも、排尿後不快感は改善しなかった。
私が好んで漢方薬を使う理由
骨盤腔内のうっ血を基盤とした病態と考えられる症例には、駆オ血剤 (桂枝茯苓丸、加味逍遥散、当帰芍薬散、桃核承気湯)などが有効と考えられます。
私の考え
この症例は、“非細菌性前立腺炎”による頻尿の患者であると思われる。
非細菌性前立腺炎は前立腺に感染があるわけはないので、 “慢性骨盤疼痛症候群”とも呼ばれる。 さらに慢性骨盤疼痛症候群は、間質性膀胱炎と同じ病態、との説もある。
OAB | 間質性膀胱炎 |
突然起る強い尿意 | いつも尿に行きたい感じ |
urgency | persistent urge |
我慢すると尿が漏れそうになる | 我慢しても尿が漏れる不安はない |
DO(排尿筋過活動)に 一致して尿意が起る | DOは認めず、知覚過敏(亢進)がある |
通常痛みはない | DOは認めず、知覚過敏(亢進)がある |
2007年8月4日にプリンス パークタワー東京で開かれた過活動膀胱治療フォーラム
では SessionⅡ「症例から学ぶ キーパッドディスカッション」が好評でした。
「平成19年10月27日に新横浜グレイスホテルで開く港北OABフォーラム2007でも同じような企画を」とスポンサーの製薬会社が考え、私は「OABと間質性膀胱炎の尿意の違い」を説明するための症例を提示するよう求められました。