直クーパーと曲クーパー
手術時に使うはさみで先が太くて丸みを帯びていて尖端で臓器を傷つけないようにできているのがクーパー。
今日はちょっと怖い話題です。
なにが怖いかというと、書いたら30分以内に二人の外科医に内容をチェックされること。
間違っていたらすぐにコメントを書かれそうです。
はさみは切るためだけに使うわけはなく、刃のついていない丸いほうで臓器と臓器の間を押し開いて行くのにも使います。
この目的には、はさみの尖端は曲がっていたほうがよいのです。
だいたいの臓器の表面が丸いから、はさみも曲がっていたほうが便利なのです(ドクターM、亜沙郎先生から鋭いコメントが入りそう。コメント歓迎です。内容に磨きがかかりますから)。
なので、開業の時、クーパーは曲クーパーの方を買いました。
1年ぐらいで刃がかけるので、毎年買い替えていますが、昨年は間違えて直クーパーを注文してしまいました。
開業してからのクーパーの使い道は糸を切ることだけ。
これでもいいか、と思って使っていましたが、勤務医時代には気づかなかったことを発見。
曲クーパーはすぐに刃こぼれしたのに、直クーパーはまったく刃こぼれせず、糸をすっと切ることができます。
勤務医時代ははさみが切れないと、器械出しナースに「切れない! 外科の使い古しをウロに使わせてるんじゃないだろうな!」なんていやみを言うだけで、クーパーの寿命なんて考えた事もありませんでした。
曲クーパーは湾曲が一番強いところに、いつも無理な力がかかっているんですね。
(「曲クーパーで糸を切っちゃあだめですよ!」っていう突込みが入りそう)
執刀医が逮捕された福島県での帝王切開手術死では、癒着胎盤をクーパーで剥がしたことに関し、
癒着胎盤をはがした方が出血を抑えられるので被告がクーパーで剥がしたことは正しかったのか、
癒着胎盤と分かった時点で、無理にはがそうとせず、大量出血を避けるために子宮摘出手術などに移るべきだったか、
についての裁判の判決が2008年8月20日に下されるとのことです。
8月20日には、クーパーで剥がすという行為について、マスコミで大きく取り上げられるでしょう。
クーパーははさみを閉じるときに刃でものを切るために使う事より、はさみを開くときに刃の背でものを剥がすための器械であることを、手術をしたことのない人に理解しておいてほしいと思います。
昨日はNASスイミングの後、港北食堂のさんま。
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