腎尿管結石・前立腺癌・肥大症の診断が得意な超音波医学会専門医。
今病院に行くと待合室でコロナをうつされるかもしれない、
AGA治療は不要不急だから、しばらく休薬しよう、
と思われている方がおられるかも。
プロペシア・ザガーロ(つまりアボルブも)は、男性ホルモンの働きを抑える抗アンドロゲン剤。
男性ホルモンを抑えることが、コロナ感染予防に効果があるかも、
という発表がちらほら出始めました。
実際の患者さんに関するデータ、実験室レベルのデータは後述します。
コロナのパンデミックの時だからこそ、男性ホルモンの働きを抑えるプロペシア・ザガーロは中断しない方が良いかも。
プロペシアのジェネリック(フィナステリド)はオンライン診療で処方箋をご希望の薬局にFAXします。
ザガーロは電話での診察を受けていただければ、
ご希望の箱数を用意しておきます。
受付で待ち時間なくお渡しできます。
後述の論文は、しばらくすれば否定されるかもしれません。
なので、AGAでも前立腺肥大でもない私は、ザガーロもアボルブも内服したりはしません。
AGAでも前立腺肥大でもない方が、コロナ感染予防目的にザガーロ(アボルブ)の処方を希望されても、当院では処方しません。
でもそういう使い方を希望される方のせいで、薬が足りなくなる可能性もないとは言えません。
当院通院中の患者さんで、プロペシア・ザガーロ・アボルブはもう飲み終わっているが、
病院に行くのは不安だと思っている方。
早めに、電話再診を受けてください。
当院では買いだめするつもりはないので、在庫がなくなると対応できません。
新型コロナについては男性の感染者のほうが多いことが分かっています。
東京都の集計によると、5月6日までの感染者は男性が2748人、女性が1993人。
男性が1.37倍です。
スペインの論文のタイトル:Male pattern hair loss among hospitalized COVID-19 patients in Spain
- A potential clue to the role of androgens in COVID-19 severity.
J Cosmet Dermatol. 2020 Apr 16. doi: 10.1111/jocd.13443.
Abstractだけ読めました。
A preliminary observation of high frequency of male pattern hair loss among admitted COVID-19 patients
and suggest that androgen expression might be a clue to COVID-19 severity.
入院した人にAGAの人が多いので、新型コロナの重症化には男性ホルモンが関係しているのかも。
前立腺がんの患者に使われる治療法に「アンドロゲン遮断療法(ADT)」があります。
ADTを受けた患者5,273人と、受けない患者37,161人を調査したところ、
治療を受けたグループで新型コロナに感染した患者は4人で、受けなかったグループは114人でした。
このうち重症は前者が1人なのに対し、後者は31人、死者は前者はゼロで後者は18人でした。
人間の肺細胞表面にはTMPRSS2(Transmembrane protease serine 2)というプロテアーゼ(蛋白分解酵素)があります。
コロナウイルスの周りには細胞にくっつくための突起がいっぱいありますが、
プロテアーゼが突起表面の蛋白を分解するとウイルスが細胞の中に入りやすくなります。
プロテアーゼ(TMPRSS2)がウイルスの侵入を助けるのです。
男性ホルモンは肺細胞表面のTMPRSS2を増やします。
この事実だけから、プロペシア・ザガーロがコロナ予防に効果があるというには論理の飛躍がもちろんあります。
プロペシア・ザガーロは5α-還元酵素を抑える薬。
5α-還元酵素が肺にあるのか(毛根と前立腺にはある)、
5α-還元酵素によってできる活性型男性ホルモンのほうが、
元の男性ホルモンよりプロテアーゼTMPRSS2を作る作用が強いのか。
まだ分からないことだらけです。
(ここまでが2020年5月10日の記事)
感染症専門医の忽那医師は大曲医師とともに国立国際病院でコロナ診療にあたる第1人者。
「3月のライオン」の作者とも親交があることでも有名な先生です。
その忽那医師が、8月10日Yahooニュースで
新型コロナは男性の方が重症化しやすい
薄毛の人に新型コロナの重症者が多い?
薄毛と新型コロナ、どういう関係があるのか?
について紹介されました。
その中で、
男性ホルモン、特に活性型男性ホルモン(5α-還元酵素によってできる)がアンドロゲン受容体に結合すると、
プロテアーゼTMPRSS2が作られて、ウイルスが細胞の中に入りやすくなること、
そしてそのアンドロゲン受容体は毛髪細胞だけでなく肺細胞などの細胞表面にも発現していること、
を紹介されています。
(2020年8月11日に加筆)