超音波医学会専門医。腎尿管結石・前立腺癌・肥大症の診断が得意です。 膀胱炎・尿道炎・男子不妊症では、院長自身が顕微鏡検査(尿・精液)を行います。 皮膚科は男性非露出部に自信があります。
エビデンスレベルが最も高いとされるランダム化比較試験。
スカンジナビア前立腺がんグループ研究(SPCG)が、そのランダム化比較試験で、前立腺全摘が経過観察より寿命が長くなったことを今月発表しました。
Bill-Axelson A, et al. N Engl J Med. 2018 Dec 13
Radical Prostatectomy or Watchful Waiting in Prostate Cancer — 29-Year Follow-up
アメリカの研究グループの報告は、前立腺全摘群と経過観察群で治療成績に有意差無し、というものでした。
私が日記で紹介したのは2012年ですが、同じグループが2017年に再集計しても同じく有意差なしでした。
スカンジナビア前立腺がんグループ研究(SPCG)は、スカンジナビア泌尿器科学会で何本か提案される臨床研究。
提案されたランダム化比較試験に、各国の病院が自由意思で参加します。
スカンジナビア前立腺がんグループ研究(SPCG-4)には、
1989年から1999年(ちなみに私がスカンジナビア泌尿器科学会で発表した年)までにスウェーデン・フィンランド・アイスランドの14施設で、695人の早期前立腺癌患者がエントリー。
この臨床研究の成績は何度か論文になっていますが、今回はエントリーした人の80%が死亡した2017年時点でのまとめです。
2017年の時点で、前立腺全摘群347人のうち71.9%が死亡、経過観察群348人のうち83.8%が死亡していました。
前立腺全摘群では経過観察群より2.9年寿命が延びるというデータでした。
スカンジナビアでコホートスタディーがやりやすいのは、国民総背番号で、死因などの行政機関が持つデータを、研究機関が利用できるから。
日本では、患者が例えば東大病院に通院してくれなくなったら、その後のことは東大病院のカルテを見てもわかりません。
2018年12月23日