木村泌尿器皮膚科

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手術の後遺症(特に勃起障害と失禁)を考える


以下は、55歳の方からいただいたメールです。

3年前の人間ドックでPSA値がその前年の3.7から4.9に上昇したので、念のためということで生検を受けましたが、その時は何も見つかりませんでした。 その後毎年のドック時のPSA値は5.1、5.2、ほぼ同じレベルで来たのですが、今年4月のドックで7.0と値が上がってきました。 そこで7月末に再度生検を受けたところ、今回は6個所の内、一番右端の1箇所から高分化型の癌細胞が検出されました。
前立腺針生検

MRIの映像でははっきりわからない程度の大きさだそうです。 その後、骨シンチと骨盤CTの検査をしましたが、骨への転移は認められないとのことでした。 診断ではステージB1だそうです。担当の医者は全摘出が一番だと言っています。しかし私としては、手術入院が仕事に及ぼす影響あるいは言われている後遺症(特に勃起障害と失禁)を考えると、それ以外の対処法はないのか思案しています。 とりあえずはホルモン療法で抑えつつ、数ヶ月以内に時間に都合をつけて手術という方針を考えているのですが、できれば手術を行わないか、先に延ばす選択肢はないものぁ. PSAの更なる上昇が見られたら手術という選択肢は駄目ででしょうか。 体調は良好で、運動も行っていますので、体力もあります。 これまでのご意見を拝見するところ、私の年齢からすれば手術というのが妥当な選択だとは思うのですが。 適切なアドバイスを戴ければ幸いです。なお身内には前立腺癌の患者はこれまでおりません。


コメント
 難しい質問で、日本にはこの質問に答えられるだけの充分な数の統計データを持っている施設はありません。
比例ハザードモデル

東大分院での治療成績のまとめを見てもらうといいと思いますが、治療法別に成績を比較するには、症例数が少ないのです。 従って、日本泌尿器科学会の権威たちも、前立腺全摘が盛んなアメリカか、医療費抑制のために症状が出るまで放置するスエーデンの論文を引用するだけです。それで、わかっていることは、Bステージで高分化癌の70歳以上の人は、摘出手術は不要だろうということです。 70歳以上の人は、全摘してもしなくても、他の病気で寿命がくるということです。Bステージで高分化癌の55歳の人が摘出手術を受けるべきかどうかは、データがありません。しかし、あなたの病歴を泌尿器科学会に提示して、どうすべきか症例検討会をやったら、半数以上が、 すぐに前立腺全摘を薦めると思います。PSAの更なる上昇が見られたら手術という選択肢を選ぶ医者も少なからずいると思います。