木村泌尿器皮膚科

院長が勤務医時代に作ったサイト

掲示板へ

LHRHアナログを選択し1年後摘出手術を


Q.私は前立腺癌で、2年前に発見されPSA22でした。現在大学病院にかかっています。BステージでLHRHアナログを選択し1年後摘出手術をお願いしました。検討結果全摘でなく削り取る方法となり、昨年6月に実施しましたが、針生検では見つからず、削り取った方から、2ケ高分化癌が見つかりました。その後PSAは0.7で注射は中止していましたが今年1月4日のPSAは2.8でLHRHアナログ注射を再開しました。又数ケ月後に注射か、全摘出か決めねばなりませんが、確率的には、どちらを選べば良いでしょうか。
注射か全摘か

A.難しい質問で、日本にはこの質問に答えられるだけの充分な数の統計データを持っている施設はありません。 東大分院での治療成績のまとめを見てもらうといいと思いますが、治療法別に成績を比較するには、症例数が少ないのです。
治療法別に成績を比較
従って、日本泌尿器科学会の権威たちも、前立腺全摘が盛んなアメリカか、医療費抑制のために症状が出るまで放置するスカンジナビア諸国の論文を引用するだけです。それで、わかっていることは、Bステージで高分化癌の70歳以上の人は、摘出手術は不要だろうということです。 70歳以上の人は、全摘してもしなくても、他の病気で寿命がくるということです。Bステージで高分化癌の62歳の人が摘出手術を受けるべきかどうかは、データがありません。

  これでは、ご相談の返事にならないので、「大胆に」手術すべき確率を計算してみましょう。LHRHアナログ注射再開後数ケ月で、PSAと超音波検査を行います。仮に、その時のPSAが0.7、超音波検査での前立腺体積が9mlとします。PSAを前立腺体積で割ったPSADは0.175となります。左の計算式のλは、-4.03となり、まだガン細胞が残っている可能性(P)は1.7%となります。 PSAが2.0、前立腺体積が5mlであれば、PSADは0.4となり、λは-0.84、ガン細胞が残っている可能性(P)は30%となります。
「大胆に」、といったのは、この計算式はまだメジャーの学会の洗礼を受けていないためと、未治療症例から求めた式を、ホルモン療法中の症例に当てはめるのは、私自身抵抗があるからです。