
木村明,福原浩,榎本裕,栗本重陽,杉本雅幸,保坂義雄,北村唯一
平成8年7月12-13日 第5回日本腎泌尿器疾患予防医学研究会(東京).
PSAD=PSA/V
Vの計測法については,PSAに比べ関心が少ない.
Vの計測法の理想
1.正確であること.
2.疾患によって誤差に差がないこと.
(癌では過大評価し,肥大症では過小評価する方法は不適.)
スライド1 PSAのFALSE POSITIVEを減らす方法のひとつとして,PSAを超音波等により求めた前立腺体積で割ったPSA dencityが用いられることがある.PSAについては測定キットにつき詳しい検討がされるが,分母である前立腺体積の計測法については論じられることが少ない. PSADの分母としての理想的な測定法は,精度が高いことがもちろんであるが,少なくとも疾患に依って,誤差の程度が異ならないことが要求される.癌に比べ,肥大症の体積を特に過小評価する傾向の強い測定法などは,肥大症のPSADを過大評価させることになり,PSADの分母として不適である.

スライド2 ハンドスキャナの普及により,前立腺体積の計測も,積層法から楕円体で近似して求める方法に変わりつつある.スライドは横断面のみから計算する1断面回転楕円体近似法により体積を求めているところである.

スライド3 これは,横断面と縦断面から左右径,前後径,上下径を計測してこれらの積にπ/6を掛ける方法である.

スライド4 我々は最近,前立腺体積の計測法として新たに,両断面の前立腺輪郭トレースによる方法(疑似積層法)を提案した.

スライド5 疑似積層法は,横断像を縦断像内にはまるように縮小コピーしたものを配列した模型を作成するものである.

スライド6 1/2に縮小コピーした図形の面積は1/4になるので,各断面の面積はAmax x 縮小率の2乗になる.したがって,疑似積層法の計算式は下の式の様に,Amaxに厚さ0.5cmと縮小率の2乗の累計を掛けたものになる.

スライド7 癌50例での,3方法の積層法に比べた誤差を示す.左が疑似積層法,中央が回転楕円体法,右が3軸を掛け合わせる方法である.平均値はそれぞれ-7.3%、 -14.8%、-9.9%であった.

スライド8 肥大症50例での,3方法の誤差を示す.平均値はそれぞれ-6.6%、 -20%、-13.4%であった.
積層法と比較した体積計測値の誤差 (%)
癌 肥大症 正常
疑似積層法 -7.3 -6.6 -6.6
回転楕円体法 -14.8 -20 -31.4
直方体法 -9.9 -13.4 -15.3
スライド9 150例での3方法の精度のまとめを表に示す.疑似積層法が最も正確で,また,肥大症を特に過小評価するといった,疾患による偏りがなかった.

スライド10 PSADはPSAに体積の逆数を掛けたものであるので,それぞれの方法での体積の逆数を比較した.肥大症での逆数の値は,癌に比較して,疑似積層法が最も低く,PSADの分母として,疑似積層法を用いると,癌と肥大症がより分離しやすく成るであろうことが示された.今回の対象150例はほとんどがPSAが採血せれていないか,もしくは測定キットがまちまちであったため,実際のPSADの値を示すことができなかった.今後PROSPECTIVE に検討したい.