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日泌総会83回



ハンドスキャナによる前立腺超音波計測の誤差についての検討

東京大分院1),東京大2)
木村明1),奥井伸雄1),北村唯一1),河邉香月2)

(目的)前立腺疾患の治療効果判定に用いられる超音波計測による前立腺重量(体積)は最近,ハンドスキャナにより撮影された最大横断像(及び最大縦断像)から楕円体で近似して求めることが多い.今回,この誤差につき検討した.(対象と方法)正常例3例,肥大症5例(内3例では治療前後),癌3例での,5mm間隔の連続横断像を用いた.すべての断層像の前立腺の輪郭をパソコンに入力し,前立腺の三次元像を作成し,面積に厚さ5mmを乗じて加算することにより前立腺重量を求め,これを真の値とした.尿道との成す角を指定した平面でこの三次元像を切ったときの最大横断面を求め,その面積の楕円を左右径を軸として回転させた回転楕円体で近似した重量W1を求めた.さらに,この断面の左右径・前後径に,前立腺部尿道長とπ/6を乗じたW2と,この断面に直交する上下径とπ/6を乗じたW3とを求めた.(結果)概して誤差はW1>W2>W3の順に大きく.特にW1は過小評価する傾向があった.探触子を傾け,冠状断に近い横断像を取るようにすれば誤差は小さくなるが,癌・肥大症の中には,こうすると W1が大きくなりすぎるものもあった.W2は,横断像と尿道との角度が小さくなるほど誤差が大きくなった.癌症例の中には,W1,W2,W3とも誤差が大きく,楕円体で近似するのは不適切と思われる例もあった.(考察)楕円体近似法の誤差は,探触子の傾け方に依存するので,走査面を三次元でイメージしながら検査する必要がある.2方向の断面から計測する場合にも3軸が直交するよう注意が必要である.特に経腹壁的検査の場合,横断像と尿道とは直交しないことに留意すべきである.治療前後に検査を繰り返した肥大症3例では,尿道との角度による誤差の程度は,治療前後で変わることはなかった.従って,探触子の挿入角度がいつも同じであれば,W1も治療効果判定には有効である.
口演原稿