PSA異常の方が前立腺生検を受けるか悩んだ時に読むページ

癌の可能性が高い人だけに日帰り6箇所生検を行っている横浜市都筑区の木村泌尿器皮膚科です。
健診でPSA異常を指摘され、入院検査を指示されて悩まれている方に読んで欲しいページです。

第100回日本泌尿器科学会発表内容

PSA density高値症例のみに限定し日帰り6か所生検を行う方針は進行癌を見逃さなかったか ー 個人医院での6年間の経験


日本泌尿器科学会発表

木村泌尿器皮膚科(横浜市都筑区)
木村明

[目的]

PSAが4以上の人は、生検が可能な医療施設に紹介され、1~3泊での針生検を勧められる。 健診の1項目が正常値を超えただけで入院検査を勧められ、面食らう人も多い。 PSA density(PSAD)から前立腺がん確率を求めるページをネット上に公開している当院は、 生検を受けたくない、もしくは日帰りでの生検を希望する 患者さんの駆け込み寺となった。 当院ではPSADが高い人だけに日帰り6箇所生検を行う方針を7年間続けて来た。この方針で重大な癌を見落とさなかったか、検討する。

[対象と方法]

2005年4月から2008年3月に、PSA高値を指摘されて、当院を受診した229人のうち、 他院で針生検を受けた既往のある人37人、 当院初診時のPSAが正常だった人36人、 を除くと、156人であった。 PSADが概ね0.2(確率が5%)以上の91人には、生検の適応と伝え、 概ね0.2以下の65人には、3ヶ月後のPSA測定をアドバイスした。 前者91人のうちの21人と、後者65人のうちの15人はその後来院せず、当院受診目的はセカンドオピニオン希望であったと思われた。 当院で即生検を行った70人中36人で癌は見つからなかった(A群)。 経過観察群50人のうち19人でその後生検を行った(B群)、 生検を行わず経過観察を継続した人31人であった(C群)。 初回生検が陰性の場合、PSAが1.5倍になった時点で2回目の生検を勧めた。

[結果]

A群(即生検陰性)

36人中、PSAが1.5倍になった6人で再生検が行われ、4人で癌が発見された。いずれも限局癌であった。初回生検後来院していなかった1例が4年後に排尿困難で来院。骨転移と伴う癌を発見され、その1年後死亡した。要経過観察の28例中14人(50%)がドロップアウトしていた。

即生検陰性 即生検陰性 即生検陰性

B群(待機生検)

経過観察50人のうち19人でPSADが0.2以上になり生検を行い4人で癌が発見された。いずれも限局癌であった。要経過観察の15例中5人(33%)がドロップアウトしていた。

待機生検 待機生検 待機生検

C群(経過観察)

生検を一度も行わず経過観察した人が31人であった。 このうち9人(27%)がドロップアウトしていた。

待機生検 待機生検

[結論]

3か月ごと通院してもらえるなら、PSADが高い人だけに日帰り6箇所生検を行う方針でも、進行がんを見落とす心配はないと思われた。 およそ40%が通院を中断しており、生検を経験した群に多かった。生検後通院しなかった症例が4年後転移癌を発症した。生検が陰性でも通院が必要であることの啓蒙が必要と思われた。

生検を一度も行わず経過観察した人が31人であった。 このうち9人(27%)がドロップアウトしていた。

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