link to PSA top page



(目的)経直腸走査用のハンドスキャナの普及により,前立腺重量の超音波計測も,最大横断像(及び最大縦断像)から楕円体で近似して求めることが多くなっている.回転楕円体で近似したときの誤差の程度は,それぞれの症例の前立腺の三次元輪郭に左右されるのみでなく,横断面を描出するための走査面が,前立腺上下軸となす角度によっても大きく変わる.本年4月の第83回日本泌尿器科学会総会でも報告したように,1断面回転楕円体近似法(最大横断面と同じ面積の楕円を左右径を軸として回転させた楕円体で近似する方法)は,2割程度過小評価する傾向があった.探触子を傾け,冠状断に近い横断像を取るようにすれば誤差は小さくなるが,癌・肥大症の中には,こうすると大きくなりすぎるものもあった.
 今回,検査した症例と似た横断像・縦断像を呈するものを,パソコンに予め記憶させておいた20例の前立腺輪郭の中から選び出すと,回転楕円体近似の誤差を教えてくれるシステムを考案した.
(方法)正常例5例,肥大症10例,癌5例での,5mm間隔の連続横断像を用いた.すべての断層像の前立腺の輪郭をパソコン(Power Macintosh 8100/80AV)に入力し,市販の3Dソフト(Swivel 3D)で前立腺の三次元像を作成した.患者右側から見た三次元像(Fig.1)を20例同時に表示し,さらに任意の走査面(Fig.2)でこの三次元像を切ったときの最大横断面(Fig.3)を4例まで同時に表示することとした.最終的に選択された輪郭につき,その横断面積から回転楕円体近似法で求めた場合の前立腺重量の誤差を引き続き表示するようにした.
(結果)このシステム使用にあたっては,検査者は,横断面を撮った走査面が縦断像のどの部位であるかを記録(記憶)しておく必要がある.このシステムを起動すると,右横から見た20個の前立腺が表示される.縦断像を参考に候補を4つまでに絞り込む.その4つにつき,横断像の走査面を指定すると,そこで切った横断像が4つ表示される.撮影された横断像に最も近い1つを選ぶと,その場合の回転楕円体近似法の誤差(第83回日泌総会予稿集参照)が表示される.
(考察)市販3Dソフトにより臓器の三次元表示は容易に行えるようになった.その応用として,前立腺の形態と探触子の傾け方に依存する楕円体近似法の誤差の程度を検査者に分かりやすく示すシステムを構築し有効と思われた.
口演原稿