PSAD=PSA/V
Vの計測法については,PSAに比べ関心が少ない.
Vの計測法の理想
1.正確であること.
2.疾患によって誤差に差がないこと.
(癌では過大評価し,肥大症では過小評価する方法は不適.)
スライド1 PSAのFALSE POSITIVEを減らす方法のひとつとして,PSAを超音波等により求めた前立腺体積で割ったPSA dencityが用いられることがある.PSAについては測定キットにつき詳しい検討がされるが,分母である前立腺体積の計測法については論じられることが少ない. PSADの分母としての理想的な測定法は,精度が高いことがもちろんであるが,少なくとも疾患に依って,誤差の程度が異ならないことが要求される.癌に比べ,肥大症の体積を特に過小評価する傾向の強い測定法などは,肥大症のPSADを過大評価させることになり,PSADの分母として不適である.
スライド2 これは,横断面と縦断面から左右径,前後径,上下径を計測してこれらの積にπ/6を掛ける方法である.
スライド3 これはこの3軸を直径とする楕円体の体積を求めていることになる.
スライド4 我々は,前立腺体積の計測法として先に,両断面の前立腺輪郭トレースによる方法(疑似積層法)を提案した.疑似積層法は,横断像を縦断像内にはまるように縮小コピーしたものを配列した模型を作成するものである. 計算式は下の式の様に,Amaxに厚さ0.5cmと縮小率の2乗の累計を掛けたものになる.
積層法と比較した体積計測値の誤差 (%)
癌 肥大症 正常
疑似積層法 -7.3 -6.6 -6.6
回転楕円体法 -14.8 -20 -31.4
直方体法 -9.9 -13.4 -15.3
スライド5 150例での3方法の精度のまとめを表に示す.疑似積層法が最も正確で,また,肥大症を特に過小評価するといった,疾患による偏りがなかった.
対象
1. PSA値が4~10
2. biplane探触子によるTRUS
3.前立腺針生検により病理診断が確定
の39例
癌 19例 非癌 20例
スライド6 肥大症の体積を特に過小評価する傾向の強い回転楕円体法,直方体法は,PSADの分母として不適な可能性があるので,グレーゾーン症例でのPSADの分母としての有用性を検討した.対象は,RIA法によりPSAを測定し,バイプレーン経直腸的超音波断層法を受け,前立腺生検で組織診のついた39(癌19例,非癌20例)である.
スライド7 現在,疑似積層法を組み込んで下さっている,観測装置はないので,以下のようにして,疑似積層法の体積を求めた.最大横断面積は観測装置の計測機能により求めた. 縦断像での5mm間隔の上下径は目盛りの記入された透明シートを重ねて読みとった.
スライド8 最大横断面積,縦断像での5mm間隔の上下のポイントを,パソコン用表計算ソフトexelに入力し,縮小率の2乗の累計,それに横断面積,厚さ0.5cmを掛けた体積を求めた.
スライド9 左に疑似積層法を分母としたPSAD,右に直方体法を分母としたPSADの分布を示す.0.15をcut off値とすると,疑似積層法でのsensitivityとspecificityはそれぞれ79%,75%、直方体法でのsensitivityとspecificityはそれぞれ74%,65%となった.
スライド10 cut off値を変化させたときのsensitivityとspecificityの関係,ROC曲線を示した.縦軸がsensitivity,横軸が1ーspecificityである.疑似積層法を分母としたPSADの方が直方体法を分母としたPSADより概して曲線が左寄りにあり,有効と思われた.