検査手順
経腹的超音波検査は排尿の前に,慎重を期するため腫瘍マーカー採血は触診の前に行う必要があるため,今まで述べた検査を初診日にすべて行うとすれば,次のような順番になる.症状を聞いて前立腺肥大症を疑ったら,まず尿をためてもらって経腹的超音波検査を行う.尿がたまるまでの間に
国際前立腺症状スコア(IPSS)に答えておいてもらう.次に
腫瘍マーカーを採血して,触診,尿流測定を行う.尿流計にたまった尿で,必ず検尿を行う.最後にもう一度経腹的超音波検査で残尿,水腎症の有無を調べる.
文献
1)木村明:前立腺計測法.腎と泌尿器科超音波医学,p200ー205,南江堂,東京,1995.
2)岡村徹,平沢潔,木村明ほか:前立腺癌診断における血清前立腺腫瘍マーカー値,前立腺体積(超音波計測による)測定の有用性.第58回日超医論文集 1991;297-298.
表1 WHOの委員会で決まった国際前立腺症状スコア(IPSS).各質問の答の合計点がスコアとなる.35点満点.
質問 | なし | 5回に1回未満 | 2回に1回未満 | 2回に1回 | 2回に1回以上 | ほとんどいつも |
排尿をした後,尿がまだ残っている感じ(残尿感)がありますか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿をした後,2時間以内にもう一度(排尿頻度)排尿に行くことがありますか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿の途中で,尿が途切れる(排尿時のとぎれ)ことがありますか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
尿意を我慢できないで,漏らした或いはトイレに急行する(尿意コントロール)ことがありますか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿の勢いが弱い(尿の勢い)と感じるのは,どの位の回数でみられますか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿時にいきむ事(いきみ)がありますか.又それは,どの位の回数でみられますか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| なし | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回以上 |
一晩に何回くらい(夜間排尿回数)排尿のために起きますか(起床時は含まない)? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
図1 肥大症の経腹的超音波断層像.左:横断像.右:縦断像.全体が球形に肥大して,膀胱内に突出している.
図2 肥大症に癌を合併した症例の経直腸的超音波断層像。CTと同様に患者を下から覗いた表示法になっており,画面右が患者の左側となる.
左 最大横断面。内腺の輪郭が明瞭に描出されている。
右 尖部寄りの横断像。左側外腺に発生した癌が低エコー域として描出されている。
図3 内視鏡手術を施行した肥大症患者の術前(上)と術後(下)の尿流曲線.縦軸が尿流率(ml/sec;1秒あたりの排尿量),横軸が時間(秒).
図4 肥大症患者での,超音波計測前立腺重量とPSAの値の関係.縦軸が対数変換したPSAの値.横軸が前立腺重量(g).前立腺重量が大きいほどPSAも高値となる.