泌尿器科医・木村明の日記

何を残した?


人生で一番輝いていた頃。

「花は花は花は咲く。私は何を残しただろう。」

被災地に思いを寄せるべき歌ですが、 何か残したか?という問いが、 私の胸に突き刺さる歌詞です。

もう学会報告をすることもないでしょう。 ましてや論文を書くことも。

私が一番輝いていたのはやはり29年前

今から30年前に書いた私の博士論文は、 独学の割には良くやった、 と論文審査のK原教授(中央医療情報部)に誉めてもらえはしました。

でも、中央医療情報部の大型コンピューターを使えば、もっと良い論文になる、 とも教えていただきました。

なので、さっそく中央医療情報部へ。 O講師を紹介されてでき上がったのが、J.Clin.Ultrasoundの論文

これが私が残した英字論文(多くはないですが)の中の最高傑作です。 その論文を最近和訳しました。 というか、国内の学会でもしゃべったので、その抄録を書き起こしました。

PSAという腫瘍マーカーが発見されてからは、 画像診断は補助的役割に追いやられました。

今盛んに研究されているMRIの拡散強調画像も、 感受性・特異度では私の論文と同程度で、 あまり進歩はありません。

前立腺がんの画像診断は、今のところ不運なテーマです。

研究というのは選んだテーマとその後のライバルの出現しだいで、 能力とは別の運不運があります。

ES細胞の権威がiPS細胞の出現でかすんでしまうようなもんです。 ちょっと例えが大きすぎますかね。

でもテニスでもそうですね。 フェデラーのせいで目立たなかったロディックみたいに。

2014年8月29日