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木村明:包茎治療のウソ.夕刊フジ,p13,2月5日号,2005.

術前に説明受け信頼できる医師に


 男性雑誌などで派手な広告展開をしている男性美容外科クリニックチェーンの経営者である医師が、1億1千万円に上る脱税の容疑で東京地検特捜部に逮捕されたニュースは記憶に新しい。今回は「脱税」という、医療とは関係のない部分での事件だったが、そもそもこのクリニックがメーンとしている「包茎手術」にも、以前から疑問の声があがっていた。
 都内で泌尿器科クリニックを経営するある医師は、「包茎手術を専門にしている美容外科には、健康保険の適用外となる仮性包茎の人に『このままでは陰茎がんになる』といって必要のない手術を勧めたり、『あなたのペニスはかなり小さい』と脅してコラーゲン注射を何本もうつなどの問題が指摘されていた」と指摘する。
 では、実際のところ包茎で手術を受ける必要はあるのだろうか。東京共済病院泌尿器科の木村明医師=写真=は次のように説明する。
 「包皮が完全にむけない“真性包茎”と、むけはするものの自然に元にもどらず、陰茎を締め付けてしまう“かんとん包茎”は、そのままにしておくと危険なので手術をしたほうがいいでしょう。しかし、単に包皮が長いだけの仮性包茎であれば、何の問題もないので無理して手術をする必要はありません」
 ちなみに日本の健康保険制度は、医学的アプローチが必要とされる状態の治療に対しては必ず保険が利くようにできている。真性とかんとんの包茎治療には保険が適用されるのはそのためであり、言い換えれば仮性包茎が自由診療となるのは、それ自体が病気ではなく、治療の必要がないということを国が認めたということでもあるのだ。
 包茎手術を専門にする美容外科のホームページや広告などには、仮性包茎でも包皮の裏側は雑菌の温床となり病気の元になる─といった記述があるが、これについても木村医師は「雑菌が増えるのはきちんと洗わないからで、仮性包茎なら風呂でよく洗いさえすれば問題ない」と解説する。
 もう一つ、気になるのが「料金」だが、多くの美容外科では、自由診療での包茎手術料金を15万~20万円に設定している。これに対して木村医師は、「都心のオフィスビルを借りて、スタッフを雇っての診療となると、15万という金額に妥当性がないとは言えないが、でもそれなら術前にきちんと説明しておくべき。たまに術中に追加処置に伴う料金加算を言い出すクリニックがあるという話を聞きますが、そんなことは本来あり得ないこと」。内臓の手術でもないので、「切ってみたらひどかった」などということはありえないのだ。
 ただし、木村医師はこうもいう。「包茎専門のクリニックは、毎日それだけをやっているので、めったにやることのない大学病院などより技術的には高いということはいえるかもしれない。どうしても手術を受けたいのであれば術前の説明をよく聞き、確実に信頼できる医師の下で受けるべき」
 保険外診療である以上、患者自身の責任で医者を吟味する姿勢が大切なのだ。   

(長田昭二)

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