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演者の略歴

第52回共済医学会口演原稿



前立腺特異抗原(PSA)が高値を示す高齢者の検査と治療


木村明 






スライド1

 (1)スウェーデンのJohanssonらは早期治療を受けなかった限局性前立腺癌患者を15年にわたって追跡し、前立腺癌で死亡したのはわずか11%であった、と報告した。米国やデンマークでの同様な統計データから、根治的治療の適応は平均余命が10年以上の患者であると考えられている。平均余命が10年未満の患者では内分泌療法が行われることが日本では多いが、この根拠となるエビデンスは見当たらず、強いてあげれば、Nairの即時内分泌療法のほうが、症状が出てから開始するより予後が良さそうだ、というメタアナリシスぐらいである。




(2)では、排尿障害もしくは老人検診などでPSA検査を施行され、異常値を指摘された高齢者には、どこまで検査し、どのように治療すべきであろうか?当科では、過去5年間に331例のbiopsyを行ったが、この中には80歳以上の80例も含まれている。全体での陽性率は30%程度であるが、80歳以上では50%以上である。




(3)これは、本学会で過去2回、報告したPSADから求める前立腺癌確率である。左の式はマイナス無限大からプラス無限大までの範囲の数値を0から1までの数値に変換するのによく用いられる関数である。 PSA densityが0.48の時、確率は50%となる。高齢者にはこの確率を示しながら、確率は50%以下ならあまり積極的にはbiopsyを勧めずに、経過観察に止めた。




(4)前立腺癌が強く疑われる場合は、前立腺針生検を行い確定診断を得るが、前立腺針生検に同意しない患者では、酢酸クロルマジノン投与にて経過観察を行っている。スライドは酢酸クロルマジノンでフォローしている患者の表である。PSAは全例で下降している。




(5)LH-RH analogは確定診断なしには使用しない、との方針を採っているが、このような方針を採用することとなった症例を提示する。



(省略)




(10)最近の当科でのPSA高値高齢者の検査と治療の方針をスライドに示す。
前立腺肥大症による疑陽性で説明できる程度のPSA値異常の場合は経過観察にとどめる。
前立腺癌が強く疑われる場合は、前立腺針生検を行う。
前立腺針生検での確定診断なしには、LH-RH agonistを使用しない。






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