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PSAは0・06まで下がりました。ところが2年後の2月から足の痛みで歩けなくなり。
Q.夫について質問します。
数年前の3月に前立腺がんが見つかりました。PSAは31。手術はできないと言われ、月1回のホルモン注射を受けました。
12月には、PSAは0・06まで下がりました。ところが2年後の2月から足の痛みで歩けなくなり、5月まで放射線治療(25回)受けましたが、7月に死亡しました。
31もあったPSAが0・06にまで下がったのに、なぜこんなことになったのでしょうか。PSAが下がった意味は何だったのか、わかりません。
A.前立腺は精液を分泌するのが役目で、PSAは精液蛋白の一種です。前立腺細胞ががん化しても、精液を分泌するという役目は忘れない事が多いのですが、悪性度が悪いほど、精液(PSA)を分泌しなくなります。
悪性度が悪い事を、分化度が低い、とも言います。幹細胞とか胚細胞とか、という言葉は聞いたことがありませんか。人間は最初の1個の細胞は何にでもなれる能力があり、それが分裂して役割分担して、精液を作る事を専門にする前立腺細胞になることを分化する、と言います。分化度が低いがんになるほど、精液(PSA)を作るという役目をなくすのです。
おそらく、この方は最初から骨に転移があったので、手術できなかったのでしょう。
分化度が高い(高分化)比較的大人しいがんが骨に転移するとPSAは3000とか5000とかになります。
骨に転移していてもPSAが31と低いというのは、低分化がん(悪性のがん)だったのだと思われます。
低分化がんではPSAの値とがん細胞の数とは比例しないので、PSAで病状を把握できないのです。