木村泌尿器皮膚科

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脳硬塞で左半身マヒに


Q. 父は71才。脳硬塞で左半身マヒになってから2ケ月近く経ち、入院中の病院で、出向の医師から2月14日に前立腺癌の告知をうけました。 医師からは他に転移もなく早期発見で非常に運が良かったので、早急に全摘出の手術を勧められました。

ダビンチ手術

その時は父と母しか居なく、2日後に弟を含め母と3人であらためて詳しい内容を聞いたところPSA6.24、生検で右左から3箇所づつ採取した結果、右2箇所から癌が発見され、グレソン5+4の悪性の癌だということでした。

前立腺針生検

この時も根治には早急な外科手術が良いと勧められましたが(約1ヶ月半後)、2日後に家族と会うのにそんなに急いで突然の(両親には貧尿の検査結果を聞くだけの心がまえしかなかった)本人への告知は配慮がなかったのではないかと伝えたところ、医師の態度が変わり、ホルモン療法(デュープリン)と注射による治療でPSA値をみながらリハビリを優先、目立った動きがなければ6ケ月後をメドに手術をしましょう。というのです。もちろんリハビリを優先してほしい家族の気持ちを汲み取ってくれたこともあると思いますが、なぜそんなに簡単に治療方針が変わってしまうのでしょうか。 グレソン5+4?(もしかして聞き違いでしたらスミマセン)がどの程度の悪性度でどのくらい転位の危険性があるのか分かりません。

グリーソンスコア

PSA値がそのわりに低いのはなぜでしょうか。 早急な手術が回避されたものの悪性の癌が手後れにならないか心配です。それにこれからMRIと骨シンチを調べるのに転移がないと言い切っていた根拠も(私も前立腺癌の知識がまだほとんど無いので間違っていたらご指摘ください。)納得がいかなく、放射線治療ができないのは当病院に設備がない(都内でも2箇所しか無い)からという理由も釈然としません。 このような内容はお聞き苦しいお話しだと思いますが、ただどうしても医師に対する膨らんだ不信感が消えず、是非先生のご意見を伺いたくメールを送らせていただきました。 まだひとりでは歩行も困難をきわめるため、他の病院での診断もあおぐことができず、看病をする老齢の母を思うと、できればこの近くの病院での医師との信頼関係を回復し、治療に望みたいところが現実です。判断する材料も非常に少ないと思いますが、何かアドバイスをお願いいたします。

医師面談

A.実は、前立腺がんの治療では、標準治療にバラツキがあるのです。治療法として手術、放射線治療、ホルモン療法があります。癌細胞を根絶することを目的とした手術や放射線治療を選ぶか、癌を抱えたまま寿命まで過ごすことを目的としたホルモン療法を選ぶかは、ステージやがんの分化度、患者さんの年齢などを考慮して決めますが、医師によって手術を優先させるか、ホルモ ン療法を優先させるかの考え方が異なっています。はっきり言うと、医師も手術で癌細胞が完全に取りきれるのか、あるいはホルモン療法で寿命が来るまで、癌細胞を押さえこめるのか、自信がな いのが現状です。したがって、手術の適応だと思う患者さんにも、強く手術をすすめることはありません。