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非細菌性前立腺炎前立腺痛の患者さんでは、前立腺周囲の静脈洞が開大しているのがエコー検査で観察されることがあります。骨盤腔内の血液の循環が悪いうっ血状態と考えられます。
これは漢方の概念では、血が停滞した状態:(オ血)に相当し、(駆オ血剤)が有効です。
静脈洞の開大のない方でも、座位で長時間の仕事で症状が悪化する方には、漢方薬の駆オ血剤が有効な場合があります。
2009年にシドニーで開かれた国際超音波医学会で慢性骨盤痛に対する駆オ血剤の治療成績を発表しました。
6ヶ月以上続く骨盤痛を主訴に147例の男性が来院されました。大多数の138例は前立腺に細菌感染を認めませんでした。このうち95例はうっ血を基盤とした病態と考えられ、桂枝茯苓丸を処方しました。
静脈洞の開大 総患者数 治癒群 中止群 無効群
60 12(20%) 29(48%) 19(32%)
35 3( 9%) 11(31%) 21(60%)

治癒群:投薬により症状が消失し投薬が不要になった時期が6ヶ月以上続いたもの
中止群:症状が改善したものの、完治が確認できないまま通院しなくなったもの
無効群:効果が全く得られなかったもの

この国際学会は慢性骨盤痛というカテゴリーで演題募集していたため、6ヶ月以上続く骨盤痛の方だけを抽出しました。ほとんどの方が他院での治療歴のある患者さんですので、治癒症例は少なく、無効症例が多い結果となりました。
しかし静脈洞の開大が観察された群の方が治療成績が良く、超音波検査は駆オ血剤が効く症例を選び出すのに役立つ事が確認できました。
ただし、拡張静脈が映っている超音波写真を患者さんに見せたことが、ポジティブな期待(positive expectation)というプラセボ効果を生んだ可能性もあります。
には桂枝茯苓丸、加味逍遥散、当帰芍薬散、桃核承気湯などがあります。

漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。
名称
桂枝茯苓丸
加味逍遙散
当帰芍薬散
桃核承気湯
中間証~実証
虚証~中間証
虚証~中間証
実証
生薬構成
    
桂皮(ケイヒ)
  
芍薬(シャクヤク)
 
茯苓(ブクリョウ)
 
桃仁(トウニン)
  
牡丹皮(ボタンピ)
  
柴胡(サイコ)
 
  
蒼朮(ソウジュツ)
 
 
当帰(トウキ)
 
 
山梔子(サンシシ)
 
  
甘草(カンゾウ)
 
 
生姜(ショウキョウ)
 
  
薄荷(ハッカ)
 
  
川きゅう(センキュウ)
  
 
沢瀉(タクシャ)
  
 
大黄(ダイオウ)
   
芒硝(ボウショウ)
   

桂皮にはのぼせやイライラを発散する作用があります。
芍薬は生理痛や肩こりなどの痛みをやわらげる生薬です。
茯苓には気分を落ち着け余分な水分を取り除く作用があります。
桃仁や牡丹皮には血液循環をよくする作用があります。
当帰と川きゅうには、血行をよくして貧血症状を改善し、体をあたためる作用があります。
蒼朮・沢瀉は、茯苓と同じく漢方の代表的な利尿薬で、むくみ症状を改善したりします。
大黄・芒硝は漢方の代表的な緩下薬で、便通をつけたり、熱や炎症をしずめる働きをします。
甘草には緩和作用があります。
これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。