過活動膀胱治療薬はどう作用?

~抗コリン剤が前立腺肥大症の禁忌でなくなった理由~

2015年4月14日  横浜市薬剤師会

木村泌尿器皮膚科

木村 明

横浜市薬剤師会

1988年に発売されたオキシブチニン(抗コリン剤)は女性の切迫性尿失禁に使われる薬であり、前立腺肥大症の患者に処方されることはなかった。

前立腺肥大症の患者を悩ませているのは、尿が出せないこと(排尿症状)ではなく、尿が近いこと(蓄尿症状)が明らかになり、前立腺肥大症でも頻尿の治療に力点が。

α遮断薬(ハルナール)に抗コリン剤(デトルシトール)を加えると患者満足度が上昇との大規模比較試験が2006年に発表された(TIMES試験)。

過活動膀胱とは膀胱の不随意収縮が原因と考えられ、過活動膀胱治療薬は膀胱の収縮を抑える薬とされていた。

実は過活動膀胱とは膀胱知覚神経の過敏であり、過活動膀胱治療薬は抗コリン剤もβ作動薬も膀胱知覚神経の興奮を抑える薬であった。

前立腺肥大症治療薬(α遮断薬やPDE5阻害薬)にも膀胱知覚神経の興奮を抑える作用がある。

前立腺肥大症に伴う頻尿に何を処方するかは、効果と副作用とを勘案して。

take home message

前立腺肥大症の患者が困っているのは排尿困難ではなく頻尿・尿失禁。

α遮断薬と抗コリン剤の併用がスタンダードになっている。

抗コリン剤もβ作動薬も膀胱知覚神経に作用するだけ。前立腺肥大症にも安心して使える。