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東部59回



CAPD患者における除水能の経時変化.

都共済青山
木村明,内田健三,上谷恭一郎

目的:当科では,1985年より1994年3月まで,43例の腎不全患者に対し,CAPDの導入を行ってきた.このうち,現在も当院でCAPDを施行中のものが19例,CAPDのまま他院に転院したものが5例,術 後2週間で横隔膜交通症を生じCAPDの継続を断念したものが1例,急性腎不全に対し短期間のみCAPDを施行したものが1例で,残りは,原疾患や合併症等によりすでに死亡したものが14例,除水能の低下によりHDに移行したものが3例であった.この3例は,9年目,6年目,5年目の症例であったので,除水能は透析年数とともに低下していくものなのか検討した.
方法:外来通院の時期のあった32例につき,1994年4月時点(あるいは最終外来受診日)の1日あたりの平均除水量と尿量を集計した.症例の内訳は,導入後2年未満の症例が13例,2年以上4年未満が12例,4年以上6年未満が2例,6年以上が5例である.6年以上の5例については,各々の除水量と尿量の推移も集計した.
結果:1日あたりの除水量は,導入後2年未満の群では平均760ml,2年以上4年未満の群では平均860ml,4年以上6年未満の群では平均700ml,6年以上の群では平均680mlであったが,除水量に尿量を加えた値ではそれぞれ,1300ml,1080ml,700ml,760mlであった.6年以上の5例中2例では年50~100mlの割合で除水能が低下していた.
考察:導入直後はむしろ除水量が少ない例が多く見受けられたが,これらはまだ残腎機能があるためで,除水量と尿量を加えた値は,長期症例ほど低値を示した.6年以上の5例中2例では,長期化に伴い除水能が低下する傾向が見られたが,一方でまったく除水量が低下しない症例もあり,全ての症例にいずれはHDに移行しなければならない時期が来るわけではないと思われた.