
日泌総会78回
泌尿器科領域における三次元表示
東京大学1,東京逓信病院2,東芝医用機器事業部3
木村明1,阿曽佳郎1,平沢潔2,周藤安造3
前立腺輪郭の三次元表示を,ラップトップパーソナルコンピューターを用いて行った.輪郭の座標は5mm間隔で撮影された経直腸的超音波断層像を基に求め,表示は,一定間隔で記憶した輪郭のポイントを上下左右に結んでメッシュ状に表示するワイヤーフレーム法により行った.酢酸クロルマジノン長期投与肥大症患者のうち,アンチアンドロゲン療法耐性となった患者2例での前立腺輪郭の経時変化を三次元表示により検討した.1例では前立腺全体が均等に縮小しその後また全体が均等に再増大したことが示されており,もう1例では,前立腺の尖部近くが主に縮小したのに対し膀胱側はほとんど縮小しておらず,その後再増大した際には尖部だけでなく膀胱側も増大していることが示されていた.三次元表示した結果,全体像が把握しやすくどの部位が主に変化したか個々の断層像を見比べるよりわかりやすく,三次元表示技術は経過観察において有用であることが示唆された.
腎細胞癌症例での、X線CT画像を基にした腎、肋骨、体表の三次元表示をミニコンピューターを用いて行った.CRT上で各スライスごと(1cm間隔)に、腎、肋骨、体表をトレースすることにより輪郭を入力した。表示法は、体表についてはワイヤフレーム法を、腎と肋骨については、メッシュが構成する面と光源との角度に応じた輝度でこの面を塗りつぶすサーフェース法を用いた.腎と肋骨の位置関係が明瞭に示され、腎摘出術の到達法決定に役立つ可能性が示された.また,新たに開発された診断用画像処理装置を用いることにより動画表示が可能になった.動画表示では,視点が連続的に変化することにより,腎と肋骨との距離のような静止画ではつかみにくい関係も捉え易くなった.三次元表示と言ってもCRT上に表示する以上は二次元にすぎない.従って,多数の臓器を表示する場合には,動画表示を行ったほうが臓器同士の位置関係が把握し易くなるであろう.