
第50回日本泌尿器科学会西日本総会口演原稿

スライド1
前立腺肥大症の治療効果判定においては,自覚症状とともに、尿流率測定が重要である.スライドは河辺班の治療効果判定法である.最近前立腺肥大症の治療法は種々提案されており,特にαブロッカー等の内服薬投与を行いながらの経過観察は、泌尿器科専門医以外の一般医家でも行われることが多くなっているが,一般医家では尿流計を備えていないことが少なくない.

スライド2
スライドは,男性患者8人の入院中の全排尿での,最大尿流率と平均尿流率の関係を調べたものです.私が以前勤務していた東大分院のデータです.全体でも良く相関していますが,個人ごとの方がより相関が良く,同一症例での経過観察では,最大尿流率の代わりに平均尿流率を用いても良いようです.
スライド3

スライドは,採尿コップの底の裏に録音マイクを張り付けたもので、排尿中の音をテープレコーダーに録音します。排尿後テープレコーダーを再生しながら,排尿の始まりから終了までの時間を計り,尿量を排尿時間で割れば平均尿流率が求まります。
スライド4
この方法の有用性を検討するため,今回は私自身がこのコップに時計を見ながら排尿し,排尿量,目測排尿時間をチェック.200回の排尿を録音.テープレコーダの再生は後で数日分をまとめて行い,排尿開始音から終了音までの録音時間を計測.目測時間と録音時間及び,各々を基にした平均尿流率の誤差を検討しました.
スライド5
200回の排尿のうち
5回は排尿量及び時間を見忘れたため,
3回は排尿量を見忘れたため,
1回は時間を見忘れたため,
7回はテープレコーダのスイッチの入れ忘れのため,
評価できず,残り184回の排尿を解析しました.
スライド6
排尿時間の食い違いは平均8.6%,平均尿流率の食い違いは平均9.6%に過ぎませんでした.
スライド7

2方法による尿流率と排尿量の関係です.排尿量が多いほど,尿流率が高くなることが知られていますが,テープレコーダー尿流率のほうが,排尿量とよく相関しており,排尿時に時計を見ながら測った時間より,テープレコーダーから測った時間の方が,正確なのではないかと思わせる結果でした.
スライド8

入院患者7例で、テープレコーダーによる尿流率と、尿流計による尿流率とが一致するか調べた。テープレコーダーによる尿流検査は複数回なされているので、その平均値であり、尿流計による尿流率の方は、1回限りの検査である。肥大症症例5例中4例では、手術により尿流率が改善していることが、両方法で一致して示されている。1例では入院中に改善が確認出来なかったため、自宅で再検査した。
スライド9

外来での尿流計検査では確認できない、改善が、自宅でのテープレコーダーによる尿流検査では、確認できた。自宅と外来検査の違いは、1回排尿量の違いによるもので、外来検査時には、60mlしか排尿できなかったが、自宅では200ml排尿できていた。
スライド10
まとめ
演者自身の200回の排尿のうち、
9回は排尿量もしくは時間を見忘れ、7回はテープレコーダのスイッチの入れ忘れたため評価できなかった。
残り184回の排尿での平均尿流率の誤差は平均9.6%であった。
前立腺肥大症5症例での尿流計と録音による平均尿流率との比較では、
尿流計で改善のみられた症例は、この装置でも改善と判定できた。
尿流計で改善のみられなかった1症例は、退院後自宅で、この装置による平均尿流率を計測した。自宅では、一回排尿量が多く、尿流率の改善が確認された。
