健康最前線

「過活動膀胱」後編

2015年5月8日  テレビ神奈川「ありがとッ」

木村泌尿器皮膚科

木村 明

『膀胱に尿がたまるのに従い、膀胱粘膜の細胞は横に 引っ張られます。引っ張られた粘膜細胞はコリンを 分泌します。』

コリンが知覚神経c線維を刺激して尿意を感じます。 抗コリン剤は知覚神経の興奮を抑えていることが 実験で明らかになってきました。

膀胱は蓄尿期にも微小な痙攣を起こすことがありま す。この痙攣は知覚神経Aδ線維を刺激します。β作 動薬はAδ線維の興奮を抑制することが明らかに なってきていました。

過活動膀胱治療薬は抗コリン剤もβ作動薬も尿意を 感じる神経を抑制しているだけで、膀胱の収縮の邪 魔をするほど高濃度では投与されていないというの です。前立腺肥大症に安心して使えると納得できる 仮説です。

去年タダラフィルが前立腺肥大症の新しい薬として 登場しました。

休息時には副交感神経が排尿を促しますが、前立腺の 中で副交感神経から分泌されるのはコリンではなく 一酸化窒素だと言うのが明らかになりました。

一酸化窒素は筋肉を弛緩させて尿を出やすくします。 タダラフィルは一酸化窒素の効果が長続きするのを 助ける作用があります。タダラフィルは勃起不全用の 薬としてまず開発されました。血管の平滑筋を弛緩 させて勃起を助けるわけですが、膀胱の動脈も弛緩 させて膀胱の血流を良くします。さらには膀胱の知覚 神経:Aδ線維、c線維の両方の働きを抑制すること も実験で明らかにされました。タダラフィルは前立腺 の筋肉を弛緩させて排尿をスムーズにし、さらに膀胱 の知覚神経の興奮を抑えて蓄尿症状も改善します。

頻尿治療に使う治療薬は女性と男性では微妙に違い ます。「妻が処方してもらった薬を試してみたが効か なかった」という高齢男性が来院することがあります

『過活動膀胱治療薬はきちんと検査を受けて処方され た薬を飲みましょう。自分が処方された薬を他の人に 飲ませてはいけません。』