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終日ウロフローメトリによるIPSSの信頼性の検討.

東京大学医学部付属病院分院泌尿器科
木村 明,奥井伸雄,栗本重陽,西古 靖,保坂義雄,北村唯一

自治医科大学泌尿器科学教室
中村昌平

東京大学医学部薬剤疫学教室
浜田知久馬

 男性入院患者20人(うち前立腺肥大症と前立腺癌の6例については治療前後)を対象に,自己申告のIPSSの7項目のうちの5項目(S頻尿,S夜間尿,S尿線中絶,S勢い,Sいきみ)と,終日ウロフローメトリ(患者に個人用のICカードを持たせ,トイレに設置した尿流計にICカードを挿入してから排尿してもらうことにより,すべての排尿時に尿流率検査をICカードに記録する装置)に記録された全排尿記録(O頻尿,O尿線中絶,O夜間尿,最大尿流率・ためらい時間の平均値)とが,一致するか調べた.S頻尿とO頻尿との相関係数は0.48に過ぎず,2時間以内にトイレに行く回数は正確に答えられない質問のようであった.S夜間尿とO夜間尿の差は,病棟の就寝時間,起床時間が通常生活と異なることによって充分説明できる範囲であった.S尿線中絶とO尿線中絶との相関係数は0.70で,尿がとぎれるのは何回に1回起こるかは正確に答えられていた.S勢いは最大尿流率の平均値との相関係数が-0.71であった.また同一人でも排尿毎に最大尿流率にかなりバラツキがあることが終日ウロフローメトリで示され,尿線の放物線の角度を尋ねる形式の質問より,何回に1回勢いが悪いかを尋ねるほうが患者が答えやすいと思われた.しかし,どの程度を勢いが悪いと感じるかは,個人差があるだけでなく,同一人でも治療前後で勢いが悪いとする閾値が変わっており,特に治療後に基準が甘くなる傾向があり,治療効果判定にIPSSを用いる場合は,留意すべきと思われた.Sいきみとためらい時間の平均値との相関係数は0.07で,スコアが高いほどためらい時間が長いといった傾向は見られず,遷延性排尿の質問になっていなかった.AUA symptom scoreは最も洗練された質問表であるが, IPSSとして輸入するにあたっては,委員会の翻訳をそのまま用いた上で,AUAと同等の規模の日本人患者での有用性の確認がなされるべきである.