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前立腺肥大症の治療効果判定においては,自覚症状とともに、尿流率測定が重要である.スライドは河辺班の治療効果判定法である.最近前立腺肥大症の治療法は種々提案されており,特にαブロッカー等の内服薬投与を行いながらの経過観察は、泌尿器科専門医以外の一般医家でも行われることが多くなっているが,一般医家では尿流計を備えていないことが少なくない. 目的:最大尿流率と平均尿流率との相関の検討.  特に,最大尿流率と平均尿流率との比の個人内変動は個人間変動に比べて小さいか. 対象:終日ウロフロメトリーで尿流曲線を記録した男子入院患者33名(うち16名は治療前後に検査を施行).

スライド2  そこで、尿流計なしでも一回排尿量を排尿時間で割ることにより求まる平均尿流率が、尿流測定の代わりに使用できるかにつき検討した。ただし,この議論を進めるためには,排尿時間を簡便にしかも正確に測る方法がなければならない.患者に始めと終りを声に出して言ってもらうのでは,数秒の誤差が出る.スライドはその対策として現在検討中の,採尿コップ・録音マイク・テープレコーダーによる排尿時間測定法である.排尿後テープレコーダーを再生しながら,排尿時間を計測しようというもので,成績についてはいずれ報告したい.



スライド3  今回の平均尿流率と最大尿流率の相関の検討は終日ウロフローメトリを基に行った.終日ウロフローメトリは共同演者の中村が開発した装置で、入院中の患者に個人用のICカードを持たせ,トイレに設置した尿流計にICカードを挿入してから排尿してもらうことにより,すべての排尿時に尿流率検査をICカードに記録する装置である.


スライド4  多数例の,ただし1例当り1回限りのデータと異なり,終日ウロフローメトリのデータを用いると個人内変動は個人間変動より少ないかといった検討が出来る.  対象は東京大学分院に入院した男性患者33人で,計1935回の尿流曲線を記録した。このうち前立腺切除術を施行した16人は,治療前に平均32回,治療後に平均40回の排尿を記録した.


スライド5  8症例での最大尿流率と平均尿流率の関係をスライドに示す.全体でも良く相関しているが,個人ごとの方がより相関が良さそうに見える.

スライド6  そこで,同一人では治療前後でも最大尿流率と平均尿流率との関係は一定に保たれているか検討した.スライドに16症例での治療前後の最大尿流率/平均尿流率の分布を示す.一定の症例もあるものの,治療前後でかなり変化する症例もあった.これらは,TURPにより尿流曲線のパターンが全く変わった症例であった.


スライド7  残り17症例と全排尿での最大尿流率/平均尿流率の分布を示した.1291排尿の標準偏差は2.54であるのに対し,各人毎の標準偏差は平均1.26で全体に比べ,個人内変動は小さかった.しかし,症例によっては最大尿流率/平均尿流率がかなり変化するものもあった.



スライド8 スライド上段はその比が比較的一定な症例,下段はその比がかなりばらつく症例である.下段のように,尿線中絶を伴うものは,排尿時間が一定せず,平均尿流率がばらついていた.


スライド9  まとめをスライドに示す.  最大尿流率/平均尿流率の個人内変動は個人間変動に比べて小さく,経過観察においては平均尿流率を最大尿流率の代わりに用いうることが示された.  しかし,尿線中絶を伴う症例では個人内変動が大きかった.
まとめ

最大尿流率/平均尿流率の個人内変動は個人間変動に比べて小さく,経過観察においては平均尿流率を最大尿流率の代わりに用いうることが示された. しかし,尿線中絶を伴う症例では個人内変動が大きかった.

スライド10  今後の課題としては,尿線中絶を伴う患者では中絶後のデータを捨てることで最大尿流率と平均尿流率の相関が良くなるかの検討を行うこと,並びに排尿時間を容易で安価にしかも正確に測定する方法を確立することが挙げられる.
今後の課題

尿線中絶を伴う患者では中絶後のデータを捨てることで最大尿流率と平均尿流率の相関が良くなるかの検討.
排尿時間を容易で安価にしかも正確に測定する方法の検討.