
日超医66回
(はじめに)経直腸走査用のハンドスキャナによる前立腺重量の計測は,回転楕円体近似法(以下楕円体法),左右径・前後径・上下径の積にπ/6を乗じる方法(以下直方体法)が用いられるが,いずれも積層法に比べ誤差は大きい1).前回,横断像と縦断像の形状から楕円体法の誤差を修正するシステムを提案した2).今回は,前立腺重量の計測法として新たに,両断面の前立腺輪郭トレースによる方法を提案する.
(疑似積層法)前立腺を楕円体で近似するのではなく,すべての横断面が同じ形をしているモデルで近似するものである.最大横断像(面積Sm)・縦断像の輪郭と縦断像内での横断像の位置(右図のDm)をコンピューターに教える.コンピューターは縦断像内にDmに平行に1mm間隔で線分をひく(D1~Dn).最大横断像をDi/Dmに縮小したものを1mm間隔で配列した模型の体積は
V = 0.1 x Sm x Σ(Di/Dm )2
で求まる.
(症例での検証)正常例5例,肥大症10例,癌5例での,5mm間隔の連続横断像を用いた.連続横断像を基に3Dソフト2)で,縦断像を得た.最大横断像の面積とこの縦断像より疑似積層法による重量を求め,積層法との誤差を計算した.楕円体法,直方体法の誤差1)と比較した.誤差の平均値±標準偏差(%)は
疑似積層法 楕円体法 直方体法
正常 -0.4±12.6 -31.6±8.3 -10.4±5.9
肥大症 -10.2±4.4 -20.9±13.2 -12.3±6.2
癌 -0.4±16.8 -22.8±20.9 -7.4±8.8
であった.
(考察)数式は簡単であり,面積計測の機能のある観測装置なら簡単に組み込めるものである.精度についてはさらに症例を増やして検討する必要があるが,疑似積層法と積層法の差は非相似形を反映しており,癌の診断に役立つ数値になる可能性もある.
(文献)1)日泌尿会誌86:247,1995
2)超音波医学22,Supple 1:142,1995