
1.目的: 東京都職員共済組合青山病院では,1992年8月より,東芝製の体外衝撃波結石破砕装置エコーリスによるESWLを行ってきた.
本装置の特色は,エネルギー源がピエゾ方式,疼痛は軽度で麻酔が不要,誤照射防止機能,焦点合わせがX線・超音波の双方で可能,砕石術中も超音波断層像が表示され,患者に見せることができること,等がある.
患者に治療中の画像を見せると,焦点域に結石が入るよう呼吸を整えてもらうことができる.今回,その画像に何が表示されているのかを患者に分かりやすくするための工夫を行った.
2.方法: ラップトップパソコンを用いて,腎・腎盂・尿管・結石の模式図を作成し,これをCRT上で左右に移動させ,腎の呼吸性移動を疑似した.結石が焦点域にある時は,衝撃波が結石に向け発射される様子も表示した.このパソコンを治療台に置いて超音波モニター画像と並列で見れるようにした.
3.結果: 結石が腎盂内,上部尿管にある症例は模式図を作成することができ,超音波画像の理解に役立った.呼吸性移動の周期は緩急調整可能で,最大毎分26回まで速めることができるので,患者の普通の呼吸に合わせることもできた.
4.考察: エコーリスの最大の特徴は,まずピエゾ素子から弱い超音波を送り,焦点域に結石に匹敵する反射体があるか確認してから,衝撃波を発射する機能を備えていることである.
我々は当初,誤照射を防止するための機能があれば,結石が焦点域に入った時のみ衝撃波が発射されるので,患者は自由に呼吸して良いはずで,患者がモニター画像を見る必要はないと思っていた.
しかし,誤照射防止機能を使用する時こそ,患者に超音波モニター画像を理解させることが必要だということに気付いた.結石が焦点域にないときは衝撃波が発射されない.麻酔が不要とは言え,衝撃波による痛みは皆無ではない.患者は痛みを避けるため,結石が焦点域から外れた場所で呼吸を止めることを学習するのである.
超音波画像は,素人には臓器の輪郭が辿り難い面がある.モニターの横に模式図を表示するためのパソコンを置いたところ,患者の理解を助けるのに有効であった.外来診療時にすでに説明を受けている腎盂造影像と類似した模式図であることも,役立った一因と思われた.