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経直腸的超音波断層法に基づく前立腺体積の簡易計算法(1方向長楕円体法)の精度についての検討

 経直腸的超音波断層法による前立腺体積(重量)の計測法には種々のものが提案されている.その中で最も正確な方法は,5mm間隔で撮影された連続断層像の前立腺面積をすべて計測し,これに厚みの5mmを乗じて加算するものである.この方法による前立腺重量の計測には,椅子型スキャナが適している.
一方,最近普及しはじめたバイプレーン探触子は検査者が手に持って操作するものであるため,5mm間隔の連続断層像を撮影するのは困難である.そのため,この種の装置では簡便法による前立腺体積の計算プログラムを内臓しているものがある.
 当科ではテクナール社の装置を使用中であるが,本装置は前立腺体積の計算に1方向長楕円体テクニックを使用している.
 本法は,最大横断像での面積S,左右径Dより,左右径を回転軸として面積Sの楕円を回転させたときの回転楕円体の体積Vを求めるもので,計算式は
  V=8S2/3πD
である.
本法の利点は,最大横断像のみから計算できるため,簡便であることである.実際,本装置では最大横断像の輪郭をトレースし,続いて長軸を指定するだけで体積が表示される.
この方式(1方向長楕円体法)による体積が,5mm間隔で撮影された連続断層像の前立腺面積をすべて計測し,これに厚みの5mmを乗じて加算する方法(積分法)とどの程度一致するかを,椅子型スキャナにより5mm間隔の断層像が撮影されている,前立腺癌(未治療)50例,前立腺肥大症50例,正常50例で検討した.
 前立腺癌50例での前立腺体積の平均値は,1方向長楕円体法では24.8cm3,積分法では28.2cm3であり,前立腺肥大症50例での前立腺体積の平均値は,1方向長楕円体法では33.4cm3,積分法では41.4cm3であり,正常50例での前立腺体積の平均値は,1方向長楕円体法では11.1cm3,積分法では16.1cm3であった.
 すなわち,1方向長楕円体法では前立腺体積が,過少評価される傾向があり,この傾向は正常例において強いことが明かとなった.