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酢酸クロルマジノン長期投与肥大症患者における前立腺重量の経時変化と三次元表示による形態の変化の検討.
目的:酢酸クロルマジノンを長期投与されるうちアンチアンドロゲン療法耐性となる肥大症患者がどの程度あるかについて検討するとともに,耐性例での前立腺輪郭の経時変化を三次元表示し,同表示技術の経過観察での有用性を検討する.
対象及び方法:酢酸クロルマジノン投与前および投与開始後に2回以上経直腸的超音波断層法をうけた52例の肥大症患者につき超音波計測による前立腺重量の変化を集計した.耐性例2例での前立腺輪郭の経時変化をパソコンを用いてワイヤーフレーム法により三次元表示した.
結果:投与前32g(52例の平均.以下同様)の前立腺重量が4.5ヶ月間の投与により21gに縮小し,最終検査時(25ヶ月後)にも21gであり,平均値では耐性となる傾向は見られなかった.投与開始後いったん30%以上縮小し,その後 30%以上再増大した症例は9例あったが,このうち8例は目的の効果が得られた後,半量の 25mgが維持のため投与されていた症例であった.50mg投与継続されたにもかかわらず耐性となった例での前立腺輪郭の三次元表示では,この症例では前立腺全体が均等に縮小しその後また全体が均等に再増大したことが示されており,25mgに減量の後再増大し手術が施行された例での前立腺輪郭の三次元表示では,前立腺の尖部近くが主に縮小したのに対し膀胱側はほとんど縮小しておらず,その後再増大した際には尖部だけでなく膀胱側も増大していることが示されていた.
結論:対象となった52例と同時期に酢酸クロルマジノンを投与された患者は138例あり,この中には投与後2度の検査を待たずに手術がなされたり(7例),患者が来院しなくなったり(4例)した症例があり,この52例が偏った症例の集まりとなってしまった可能性もあるが,最低6ヶ月,最長59ヶ月,平均25ヶ月の期間ではアンチアンドロゲン療法耐性となる症例は僅かであることが示された.
 耐性例2例での前立腺輪郭の経時変化をパソコンを用いて三次元表示した結果,全体像が把握しやすくどの部位が主に変化したか個々の断層像を見比べるよりわかりやすく,三次元表示技術は経過観察において有用であることが示唆された.