link to PSA top page

(スライド1)  我々は,入院中の患者のすべての排尿時に尿流率を記録する装置,終日ウロフローメトリを用いて患者がIPSSに正確に答えているか検討し,前回の本研究会等で発表した.2問目の2時間以内にトイレに行く回数は正確に答えられず,1問目の残尿感と同じスコアがチェックされる傾向があること,Qmaxは連続的に分布し,何回に一回勢いが弱いか問うのは不自然であること,日本語の質問表では,いきみと勢い,残尿感と尿線中絶とがAUAの調査より高い相関を示すこと,結果として5項目の内,独立変数と言えるのは,尿線中絶と勢いだけであること,したがって,TURPで,尿線が中絶しなくなるとすべてのスコアが良くなること,などを指摘した.



(スライド2)  当科の病棟に入院患者全員の排尿量と時刻を記録する装置(ウロメセル)が、昨年3月導入された。スライド左がウロメセルの装置である.患者が自分の名前の書かれたボタンを押すと尿投入口が開く.スライド右がウロメセルがプリントした,ある患者の一日の記録である.トイレに並んだ蓄尿袋を廃止し,尿測や採尿などの省力化を目的にした装置である.  今回はこの装置の記録を基に,夜間頻尿と年齢との関係につき検討した.この次の演題にも有るように,加齢に伴いADHの分泌低下が起こり,夜間多尿を生じることは報告されつつあるが,生理学的条件を一定にするため,限られた症例数での検討となっている.例えば,ある病棟に入院した患者全員を対象に,夜間尿量を集計した報告は見られない.



(スライド3) 昨年3月以降入院した男性患者の内、カテーテル留置例などを除いた59例で,21時から6時までの排尿回数、尿量、1回排尿量を集計した。



(スライド4) 男性59例で,加齢に伴い夜間排尿回数は増加しており,相関係数は0.49で統計学的に有意であった.加齢に伴い夜間排尿量も増加していた。



(スライド5) 肥大症例を除いた36例でも、加齢に伴い夜間排尿回数,夜間排尿量が増加していた。



(スライド6) 男性59例での,加齢に伴い夜間一回排尿量は減少し相関係数は0.41で統計学的に有意であった.肥大症例を除いた36例でも、加齢に伴い夜間一回排尿量は減少していた。  以上より,加齢による夜間尿量の増加と,一回排尿量の減少の双方が、夜間頻尿の原因であることが明かとなった.



(スライド7)  しかし,排尿量の集計のみでは,夜間の尿量が増していることの証明としては不十分と思われた.例えば,膀胱容量が500mlあれば6時まで排尿しない人が,容量が200mlに減少したために翌朝まで我慢できず200mlずつ2回夜間排尿し,そのために0から400mlに夜間尿が増えたとの反論も成り立つ.



(スライド8) そこで,ある時刻に排尿された尿は、前回排尿後に産生されたものとして単位時間あたり均等に割り当てることにより,21時から6時までに産生された尿量,夜間尿産生量を算出した.この算出には 1.残尿は0ml もしくは常に一定。 2.ある排尿から次の排尿まで尿は同じ速度で産生される。 のふたつを仮定している.



(スライド9) スライド左は,男性59例での,年齢と夜間排尿量との回帰直線で,右は今説明した夜間尿産生量と年齢との関係である.危険率は0.18で統計学的には有意ではなかったものの,加齢に伴い夜間尿産生量も増加する傾向がみられた.スライドには示さないが,肥大症例を除いた36例でも,加齢に伴い夜間尿産生量も増加する傾向がみられた.



(スライド10) まとめをスライドに示す. 1.加齢に伴い、夜間排尿量は増し、一回排尿量は減少する。 2.加齢に伴い、夜間尿産生量も増加する傾向が見られる。 3.加齢に伴う夜間頻尿は、一回排尿量の減少と夜間尿量の増加の双方が原因と思われる. 今回の検討方法は自動蓄尿装置を備えた病院なら,患者に何等負担を強いること無く集計できるものであるので,同様な検討を行っていただけると幸いである.

まとめ


1.加齢に伴い、夜間排尿量は増し、一回排尿量は減少する。

2.加齢に伴い、夜間尿産生量も増加する傾向が見られる。

3.加齢に伴う夜間頻尿は、一回排尿量の減少と夜間尿量の増加の双方が原因と思われる。