

私の著書 「尿の悩みを解決する本」 <教育書籍> (千円) の下書き原稿
医者関係でない付き合い,妻の親戚,友人,知人とか,マンションの管理組合などでの付き合いで,私が医者であることが話題になると,”何科のお医者さんですか”と尋ねられますが,”泌尿器科です”と答えると,多くの場合,そこでその話題はおしまいになります.最近は前立腺肥大症もマスコミで取り上げられようになったおかげか,”将来おしっこの出が悪くなったらお世話になります”という人も少しはいますが.披露宴の席などで問診など始めたくないので,私にとってそれはそれで好都合なのですが,やはり,”泌尿器科ってどんな病気があるのか知らない”という人が多いと思います.
病気の説明に入る前に,構造の説明ばかり長くしましたが,これは尿の流れ道は,食物(大便)の流れ道ほど一般の人に馴染みがないからです.食道,胃,十二指腸,小腸,大腸,肛門の順番はほとんどの人がわかると思いますが,尿管と尿道を混同している人は結構多いのです.これを混同したまま,尿管結石や膀胱ガンの説明を聞いても,混乱するだけです.泌尿器の医者が消化器を扱う内科医や外科医と同じぐらい丁寧に説明したつもりでも,患者さんにまったく理解されていないということが起こるのです.下の図はここにしか出てきませんから,病気の説明でわからないことがあったら,このページにもどって構造の復習をしてください.
ガン,細菌の感染による炎症などは,泌尿器にかぎらずどこの臓器にもある病気ですが,やや特異なものに,尿のなかの成分が水に解けきれないで固体になってしまう結石と,尿が上から下へと順調に流れないために起こる異常があります.また,どこに異常があっても,最終的に出てくる尿に異常が見られること,その尿が健康時には透明なおかげで,本人が異常に気付きやすく,尿の異常が初期症状であることが多いのも,泌尿器の病気の特徴と言えるでしょう.
さらに,泌尿器のガンは,胃腸や肺にできるガンと違って手術以外の治療法が有効だという特徴があります.前立腺ガンには女性ホルモンが良く効きますし,膀胱ガン,睾丸腫瘍(ゴロがわるいので,コウガンガンとは呼びませんが,ガンです)には,シスプラチンという抗ガン剤が良く効きます.腎ガンには,インターフェロンの注射が有効です.
日本人に圧倒的に多い胃ガン,最近増えつつある肺ガン,大腸ガンで,肉親をなくした方は少なくないでしょう.これらに有効な抗ガン剤は今のところありません.その末期を看病した人達には,手術で取りきれなければ,もう何をやっても無駄,抗ガン剤など苦しむだけ,という印象をもっている方が多いようです.泌尿器のガンはそうではないのですが,手術以外の治療を勧めると,家族が断わって退院していくことがあるのは残念です.
