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私の著書 「尿の悩みを解決する本」 <教育書籍> (千円) の下書き原稿


膀胱ガン 他に症状のない血尿

 膀胱ガンは五十歳代以上の方々に多いガンで、ある日突然痛みなどの症状なしに、血尿が出ます。これを無症候性血尿といいます.血尿がひどく、膀胱内に血のかたまりができると排尿しにくくなり、まったく尿が出なくなることもあります。逆に,何も治療しなくても血尿が数日で止まることもあります.またガンが膀胱の出口付近にできているときなは、尿が出にくくなったり、膀胱炎も起こして排尿時に痛みを生じることもあります。
 血尿の程度と病気の進行程度とは必ずしも一致しないので、中年以上の人で肉眼でもわかる血尿が出たときは、一刻も早く、医師に相談する必要があります。また、血尿には、目で見えないもの(顕微鏡的血尿・尿潜血)もありますが、これは健康診断の検尿で発見されます。もしこの血尿が長く続くようでしたら、泌尿器のガンを考えてみる必要があります。

診断

 泌尿器の病気の検査はわずらわしいものが多く、昔は確実な診断をするためには、患者さんから敬遠されがちな、つらいものもありました。尿道から7mmの径の内視鏡を入れて膀胱の中を観察する膀胱鏡検査はその代表のようなものです.しかし、最近の診断機器の進歩により,膀胱に大きな異常がないかどうかのスクリーニングは,超音波検査,造影剤によるX線検査,CTスキャンなどで可能になりました.したがって,顕微鏡的血尿だけの患者さんに、いきなり膀胱鏡検査をやるようなことはなくなりました.

治療法

 膀胱ガンの多くは根が浅い表在性のもので、これは尿道から電気メスつきの内視鏡を入れて切除できます.入院も2週間程度ですみます.ただし,表在性膀胱ガンは場所を変えて,次々と発生するという性質があり,人によってはこの治療を半年毎に受けなければならないことがあります.
 進行したガンでは,膀胱を摘出する必要があります.この場合は尿の出口をおへその近くに作る尿路変更術を合わせて行うことになります.その出口からは絶えず尿が流れ出してくるため,袋を貼っておくのですが,最近,おなかの中に腸を使って尿をためるタンクを作っておき,時々外から管を入れて尿を出す方法が開発されました.袋を貼っておく必要がないので温泉に行くこともできます.
 進行ガンへの新たな治療法として,膀胱をとる替わりとして,膀胱を温めて放射線照射を伴用する方法(温熱療法)や,膀胱へ行く動脈にカテーテルを入れて直接膀胱腫瘍に高濃度の抗ガン剤を流す方法が試みられています。
これらの方法で,ガンが充分に縮小して,手術で取りきれると判断されれば,膀胱をとる手術を引き続き行うこともあります.

予防

 早期診断、早期治療によって、ガンの死亡を少なくすることができるようになりましたが、もっとも大きな課題は、やはり、発ガン予防です。多くのガンは、外部環境や生活環境と密接に関係していることが分かっていますし、膀胱ガンもその例外ではありません。
 膀胱ガンは、職業ガンとして注目されたガンの一つです。約一世紀前に、ドイツの染色工業で働く人たちに膀胱ガンが多発しました.その後、これは化学物質による発ガンであったことが明かにされました。今日では、こうした化学物質を取り扱う職場では、厳重な管理がされていて、ほとんどがガンの発生はなくなっています。
 しかし、職業ガンではない膀胱ガンは、現在でもなお増えつづけており、たばことコーヒーが膀胱ガンの発生に関係していると言われています。したがって、身近な対策としては、禁煙が考えられます。
 また,表在性膀胱ガンで内視鏡手術を受けた人は,その後は,再発チェックのために,定期的に膀胱鏡検査を受ける必要があります.血尿が出ないからと通院するのを止める人がいるのは,困ったものです.
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