泌尿器科医・木村明の日記

木村顔

腎尿管結石・前立腺癌・肥大症の診断が得意な超音波専門医。

膀胱炎に処方する薬


キノロン系抗菌薬3日間からセフェム系抗生剤5日間へ。

当院の女性初診患者で一番多い病気は急性膀胱炎です。

膀胱炎は、大腸菌などの腸内細菌が尿道をさかのぼって膀胱で増殖して起こる病気で、

尿が近くなり、トイレから帰ってきても又すぐ行きたくなったり、

尿をしたあともまだ残っている感じ(残尿感)がしたり、

排尿時に痛みを感じたりします。

血尿が出ることもあります。

腸内細菌は,大腸・直腸に棲んでいる菌ですので,肛門やその周囲には必ずいます。

女性は尿道と肛門が近いので膀胱炎をよくおこします。

診断は、尿検査でつけられます。

顕微鏡で白血球や細菌が見えます。

治療は抗菌剤の服用です。

当院では、キノロン系抗菌薬であるレボフロキサシン500mgを1日1回3日間処方をファーストチョイスとしてきました。

ところが今年初め、キノロン系抗菌薬の使用上の注意が変更されました。

「重要な基本的注意」として

「大動脈瘤、大動脈解離を引き起こすことがあるので、観察を十分に行うとともに、

腹部、胸部又は背部に痛み等の症状があらわれた場合には

直ちに医師の診察を受けるよう患者に指導すること。」

なので今年から、セフェム系抗生剤5日間処方をファーストチョイスとしています。

1週間後に再受診してもらい、尿中の白血球や細菌がいなくなったことを確認します。

初診日に提出した細菌培養同定検査・.細菌薬剤感受性検査の結果もお話ししています。

セフェム系抗生剤で治癒していなかった場合、細菌薬剤感受性検査に基づきレボフロキサシンを処方します。

その時には先ほどの「指導」を行いますが、

根拠は、海外の疫学研究においてフルオロキノロン系抗菌薬投与後に大動脈瘤及び大動脈解離の発生リスクが増加したとの報告があることだけだ、

と説明し、不安を和らげる努力をしていますが、

「そんな怖い薬は嫌です!」

とおっしゃる方もおられるので、細菌薬剤感受性検査に基づき別の抗生剤を選ぶこともあります。

2019年12月28日