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木村明:尿毒症.この症状をどう診る,p261ー262,中外医学社,東京,1996.



24.尿毒症ーコメントA

腎後性腎不全
泌尿器
 泌尿器科の立場で強調すべきことは,腎後性腎不全であろう.尿路が閉塞することによる腎不全で,救急処置により腎機能の正常化または病勢の進行を停止しうる唯一の腎不全である.

基礎疾患

 良性疾患では,両側の尿管結石,元々腎がひとつしかない人(先天性あるいは腎摘除術後)での尿管結石,前立腺肥大症あるいは神経因性膀胱などがある.前立腺肥大症や神経因性膀胱で排尿できないのは尿閉であり,腎で尿が産生されない無尿とは異なるが,排尿障害が徐々に進行した場合,本人はそれに気づかず,数年で残尿が1Lを越えるまでになっていることがある.このような多量の残尿が存在すると腎盂内圧も高くなり腎後性腎不全を生じる.
 悪性疾患では,膀胱癌,前立腺癌などの泌尿器癌の他,子宮癌,卵巣癌,結腸癌などの骨盤内に発生する癌,胃癌のダグラス 転移などがある.癌が両側尿管に浸潤して尿管が閉塞する.膀胱癌,前立腺癌では多量の残尿による腎後性腎不全の場合もある.

診断

 血清,尿生化学では腎性腎不全と鑑別できない.上記の基礎疾患の有無につきよく問診し,超音波断層法,CTなどの画像診断で水腎症を証明する.

治療
DJカテーテル
 尿管が完全に閉塞していなければ,膀胱鏡下に尿管内に留置カテーテルを設置する.膀胱鏡下にまずガイドワイヤを腎盂まで挿入する.太さ2mm,長さ25cmぐらいで両端がとぐろを巻いている(pig tail)カテーテルをガイドワイヤにかぶせて先端が腎盂内に届くまで挿入し,ガイドワイヤを抜くと両端が腎盂内と膀胱内でとぐろを巻いて固定される.
 尿管が完全に閉塞していれば,腎婁術を行う.患者を腹臥位とし,背面より超音波断層法で腎を描出する.図のように超音波ガイド下に腎盂を穿刺し,ガイドワイヤを挿入する.ガイドワイヤにかぶせてダイレーターを何本か腎盂内に導き,婁孔を太くし,最後にカテーテルを留置する.
 尿管結石が原因の場合は,結石の治療(結石破砕術)を行う.
 前立腺肥大症あるいは神経因性膀胱では,尿道にカテーテルを留置するだけで腎不全が完治する.他科に腎不全で入院している患者の受け持ちから,「CTで両側水腎症と下腹部にcystic massを認めます.御高診お願いします」という依頼で出向いてみると,cystic massは膀胱内の残尿で,尿道カテーテル留置の出前サービスだけして帰ってくるということがままある.そのような患者では,問診しても患者は尿は出にくいとは言わず,頻尿,溢流性尿失禁(23の項を参照)になっているため,「よく出る」「出すぎて困る」などと答えることがある.問診だけで排尿障害は否定できない.

金言
前立腺肥大症のおじいちゃんは頻尿のことを「尿がよく出る」という.

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